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欧州の鉄鋼大手、日本のバイオマス発電に虎視眈々!

ティッセンクルップ、FITの優遇見据え2―3年後に数件の受注を目指す
欧州の鉄鋼大手、日本のバイオマス発電に虎視眈々!

豊田通商子会社が島根県で完成させた木質バイオマス発電所(写真は記事と直接関係ありません)

 ドイツ鉄鋼会社のティッセンクルップは、木質バイオマス発電事業で日本市場に参入する。このほど、オーストリアのエンジニアリング会社レポテックと技術提携契約を締結。レポテックが持つ発電出力2000キロワット未満の中規模発電設備の日本での販売権を取得した。日本国内で発電プラントのEPC(設計・調達・建設)と操業指導・保守サービスなどを手がける。ティッセンクルップはすでに営業活動を始めており、2―3年後に数件の受注を目指す。

 ティッセンクルップの日本法人ティッセンクルップ・オットー(東京都港区)が実務を担う。ティッセンクルップはこれまで、発電出力1万キロワット以上の大規模バイオマス発電プラントを手がけていたが、中規模を扱うのは今回が初めてという。

 日本では本年度から再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、2000キロワット未満の木質バイオマス発電を優遇。買い取り価格は40円に増額され、需要拡大が期待できる。

 同社が手がける発電設備は、未利用間伐材などをガス化し、ガスエンジンで発電するもの。最大35%の発電効率を達成し、ガス化で課題のタール発生も一般的なシステムに比べ約10分の1に抑えられる。水蒸気と酸化ケイ素やマグネシウムが主原料のオリビアサンドという特殊な砂で木材をガス化し、高効率・低タールを実現した。

 木質バイオマス発電設備はタクマやJFEエンジニアリング(東京都千代田区)などが手がけるほか、日立造船も新規参入した。有力国内メーカーが軒を連ねるなか、同社は製鉄プラントなどを手がけた実績を武器に国内市場を攻める。
日刊工業新聞2015年06月18日 機械・ロボット・航空機面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 ティッセンクルップは欧州鉄鋼会社の老舗だが、近年の世界的な鉄鋼市況の低迷で、エレベーター事業や自動車部品事業など「非鉄鋼」事業へのシフトを進めている。ただ製鉄プラントで培ったエンジニアリングの能力には定評がある。日本のバイオマス発電市場の活性化に一役買いそうだ。

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