リニア3兆円借り入れ完了、JR東海の損得勘定

返済期限は2056年。中部経済はどのように変貌するか

 リニア中央新幹線の投資が活溌化してきたJR東海。今年度の関連設備投資額は1590億円で、南アルプストンネルや品川駅、名古屋駅を中心に沿線で準備が整ったところから、トンネルの掘削工事や地中連続壁工事などに本格的に着手する。超電導リニア技術の開発による営業線建設、運営・メンテナンスコスト低減にも50億円を投じる。

 そしてこのほど、建設前倒しのため、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と7500億円の借り入れ契約を結んだ。利率は全期間固定の1・0%で、返済期限は2056年1月12日。財政投融資を活用した機構からの低利融資は今回が5回目で、総額3兆円の借り入れが完了する。

 ただ開業に向け実際はこれから10年が正念場だろう。まずは用地取得。柘植康英社長は「地権者が5000人と多く、都市部では難しい面もある。地方自治体の力を借りて、丁寧に労力を惜しまず進める」と話す。

 コストダウンも課題だ。20年の東京五輪・パラリンピックを控えて、工事環境が厳しくなる。投資額が増えており継続的にコストを削減する必要がある。

 残土処理の問題も横たわる。柘植社長は「愛知県から山梨県では県のご協力で、必要な分より多くの候補地がある。厳しい状況なのは、東京都と神奈川県だ。地域と話し合い、理解を得ながら進める。残土が発生する頃には明確に決める」という。

 リニア中央新幹線の用地取得、残土処理はいずれも、地域住民に丁寧に説明し、理解を得ることが引き続き求められる。難工事が予想される南アルプストンネルなど、各工事はリスク管理も不可欠だ。史上有数の交通インフラ計画だが、先行区間を予定通り開業できるのかが、その先で待つ大きな飛躍につながる。
 
 「東京と名古屋が一つの都市のようになり、首都圏への集積を分散できる。東海地域の強みであるモノづくりは、東京には持ち込めない。むしろ首都圏の本社や工場、研究所を名古屋に移すことは十分可能だ」と柘植社長。

 借入金の返済期限は約40年後。JR東海、そして中部経済はどのように変貌を遂げているのだろうか。

日刊工業新聞2017年7月11日付記事を加筆

明 豊

明 豊
07月18日
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 27年の品川―名古屋間開業に向け「JRゲートタワー」などがオープンするなど名古屋駅周辺がすでに変わり始めている。地価も上がり始めている。リニア中央新幹線は当初、27年の開業から8年後に名古屋―大阪間を着工し、45年に開業する計画だったが、関西の経済界をはじめとした早期開業の強い要望を反映し、工事の前倒しが決定した。政府から財政投融資を活用し、JR東海の財政負担を軽減して着工までの空白期間を短縮。開業は30年代後半になるとみられる。中部は自動車、さらには期待される航空機などモノづくりの基盤はあるが、関西経済はどうなるか…。
 JR各社も今年で民営化30年。東日本、東海、西日本、九州、貨物は、民営化の際に与えられた車両やネットワーク、サービスを磨きながら事業規模を拡大。それぞれの個性を発揮している。一方、北海道や四国など、沿線の人口減少などから、厳しい経営環境の中で自立できない会社もあり、路線の維持に向けた支援体制の構築なども課題。そして海外展開が待っている東海や東日本。企業のありようも焦点になりそうだ。
 

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