トヨタ、日立、オムロン…「インダストリー4.0」実践的課題

 インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI、理事長=西岡靖之法政大学教授)は10日、東京都内で公開シンポジウムの2日目を開き、製造現場へのIoT導入について25件の実証試験の成果報告をした。顧客から機械の稼働データをもらい、品質向上に生かした例や、ベテランの暗黙知を数値化できた例などが紹介された。また、成果とともに課題も多く示され、各社が共通して取り組むべき課題の輪郭も浮かび上がりつつある。

 即席めん製造機メーカーの大竹製麺はアビームシステムズやNECなどと連携し、機械の納入先であるイトメンの工場にIoTを導入。機械の稼働や周辺環境のデータを収集することで、温度などが麺の量のばらつきに影響することを特定した。

 こうした成果の一方で、「お客さんに(ノウハウにもかかわる)データを下さいと頼むのは、難しいお願いだった」と大竹製麺側は振り返る。今回、顧客のイトメンにIoTのメリットを熱心に説明し、なんとか納得してもらった。このような努力が今後も欠かせないようだ。

 日立製作所は、ニコンなどと連携し、稼働していない機械などの生産リソースをシェアリング(共有)できるシステムの開発を目指している。担当した日立の堀水修IVI理事によると、課題として言葉の意味に揺らぎがあり、企業や工場の間でデータを連動させるのを難しくしているという。

 堀水氏は「茨城県内にある日立の工場の間でも、ある単語の指す意味が違う場合がある」。そこで言葉の意味を統一する、「言葉の名寄せ」を進めてきた。

 さらに、空いている生産設備はあっても、熟練の溶接工など人的資源が足りないとシェアリングはできない。「人もリソースとして見える化したうえ、検索できるような仕組みが必要かもしれない」(堀水氏)という。

 設備保守のIoT化に取り組んだのはオムロンやトヨタ車体など。共通の課題として、「日本の設備はなかなか壊れないので、異常時のデータを集めにくい」(オムロンの森健一郎氏)といったことが挙がった。長期にわたりデータを集め続ける必要がありそうだ。

 また、東芝の松岡康男氏は、「保全だけではメリットを実感してもらいにくい。保全に品質保証を組み合わせれば、価値は1000倍高まる」との見解を示した。

 IoTで技能の数値化などに取り組むのはトヨタ自動車やジェイテクト。トヨタの福田徹氏は、「技能の見える化はできた。ただ、若手にアドバイスできる人工知能を実現するまでは至っていない」と進捗を話した。「今後、画像データなど大量のデータを効率よく蓄えて、検索できる仕組みも必要だろう」と見通す。

 今回のシンポジウムを主催したIVIは、200以上の企業や団体が加わる国内最大級の製造業向けIoTの推進団体。実証の成果だけでなく、抽出された課題についても、多くの企業にとって参考になるはずだ。

『スマートファクトリーJapan』
 製造現場や生産管理の先進化や効率化を目指す「スマートファクトリーJapan 2017」を2017年6月7日(水)〜9日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した生産管理・システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。

 また、昨年まで「クラウドコミュニティ」という名称でセミナーセッションを中心に企画展を実施してまいりましたが、時代の潮流に合わせてID獲得型フォーラムとして「IoT・AI Innovation Forum」を同時開催いたします。
【出展者募集中】



日刊工業新聞電子版2017年3月11日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
03月12日
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「IoT」という単語が先走っているが、これをどう取り入れ業務改善やビジネスにつなげたらいいか明確になっていない、という課題は大小限らずさまざまな企業が口にしている。特に本文にもあるように、装置や設備メーカーなどは顧客のデータをどこまで使えるのかが悩ましい所のようだ。IoT関連ビジネスは普及の途上。各社が課題を共有し、その対策をスピード感を持って制度や規格に落とし込むことが、「日本版インダストリー4.0」の実現に重要になるだろう。

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