日本版「インダストリアル・インターネット」、世界と中小企業へ広がり

普及団体、「つながる工場」へ手応え

 国内最大級の製造業向けIoT(モノのインターネット)推進団体のインダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI、理事長=西岡靖之法政大学教授)は9日、2017年度に実証事業などを全国規模に広げ、また18年度には国際展開も実現する方針を明らかにした。IVIは日本のモノづくりの強みが生きるIoT実証を積み重ねてきた。今後は活動の視点を広げ、全国の製造業の底上げや、IoTをめぐる国際潮流で日本の主導権を発揮につなげる考えだ。

 IVIが東京都内で9日に開いた「IVI公開シンポジウム2017−Spring−」で、西岡理事長が今後の方針を明らかにした。

 それによると、16年度に試験的に始めた地域の中小企業向けのIoT導入支援を拡張する。経済産業省などが立ち上げた「スマートものづくり応援隊」や「地方版IoT推進ラボ」と連携し、全国最大10カ所で中小企業向けのIoT実習セミナーを開く。

 地域の組織と連携し、「参加した企業には途中で逃げずにやり切ってもらう」(西岡教授)と強調するように、最後までフォローアップを続ける。

 また、主要活動の実証事業でも、企画立案や打ち合わせを東京だけでなく全国各地で行う。会員企業のトヨタ自動車やマツダなどは工場を構える愛知県や広島県などで実証しており、こういった地域の実証活動をより円滑に進められるようにする。

 18年度は、海外のIoT推進団体と連携し、実証事業の連携や企業マッチング、IoTの共通基盤を進めていく方針を明らかにした。IVIは16年末に標準化に向けたもモデル提案を国際機関に提出するなど海外を見据えた活動も始めており、今後はさらに踏み込んだ活動を目指す。

 こういった事業拡張の背景には、「実証」「実証の水平展開」といった主要活動が軌道に乗りつつあり、次のステップに活動を移す素地ができてきたことが挙げられる。西岡教授は、「こんなに事業を拡張して大丈夫かと心配されそうだが」と前置きしつつ、「デジタル時代も日本のモノづくりが健在であることを強く海外発信する」と断言した。

 シンポジウムでは経済産業省の糟谷敏秀製造産業局長が基調講演し、「俊敏さなど、日本の製造現場は強い」とたたえつつ、サプライチェーンや設計との連携の低さといった課題も指摘。「今後はIoTでサプライチェーンや市場などの動きに俊敏に対応できる現場を実現して欲しい」と要望した。

 これに対し、西岡教授は「IoT機器を汎用的に使えるようにすれば、投資コストが下がり、工場間連携などの実現のハードルが下がり、普及が進む」との見通しを示した。さらに「未来プロジェクト」と称して、企業をまたいだ生産工程をコンピューター上に高度に再現し、サプライチェーンの連携を高度化する仕組みの実現に挑戦することも表明した。

『スマートファクトリーJapan』
 製造現場や生産管理の先進化や効率化を目指す「スマートファクトリーJapan 2017」を2017年6月7日(水)〜9日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した生産管理・システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。

 また、昨年まで「クラウドコミュニティ」という名称でセミナーセッションを中心に企画展を実施してまいりましたが、時代の潮流に合わせてID獲得型フォーラムとして「IoT・AI Innovation Forum」を同時開催いたします。
【出展者募集中】

日刊工業新聞2017年3月10日

八子 知礼

八子 知礼
03月10日
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 IVIがこれまでの取り組みに手応えを感じている。「つながる工場」の仕組みをこれまでのようなテストベッド企業のみならず全国展開して支援するという方向性は大いに歓迎される話だ。筆者も昨年9月以降、全国各地の地方版IoT推進ラボが立ち上がっているまたは準備中の自治体や団体10箇所近くから招かれて講演を行っているが、ラボに認定されていても具体的に何をすれば良いかわかっていないか行動できていないところがほとんどだ。その点では、今回のIVIによる取組支援は製造業向けの取り組みネタに困る自治体や個別企業には朗報となりうるだろう。
 先日のニュースイッチコメントでも述べたように、補助金などに依存しなくても導入できるほどIoTへの取り組みの敷居は下がっている。もはや取り組まない理由は本人たちのやる気以外はないと行っても過言ではなくなってきた。過疎が進む自治体や業務課題が切迫する企業を中心に取り組みは真剣さを増し、加速する。IVIの支援活動の行方の引き続き期待したい。

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