「東北人はもっと声を上げていい」自立的な復興目指して

海輪誠東北経済連合会会長(東北電力会長)が語る震災から6年

 あの日―。中部国際空港から名古屋市内に向かう車中で揺れを感じた。三陸沖を震源とする地震が発生したとの一報を受け、すぐさま空港に引き返し仙台便を探した。

 一刻も早く東北電力本店に戻らなければ。気持ちが急(せ)いた。ところがテレビ画面から飛び込んできた映像に言葉を失った。数時間前に飛び立った仙台空港が巨大津波にのみ込まれていた。

 あれから6年。仙台市近辺に限れば一見、震災前の姿を取り戻しているようにみえる。しかし、被災者の生活や地域経済を支える事業者は今なお、多くの困難に直面している。
海輪誠会長

復興は道半ば


 東日本大震災からの復興ステージは2016年度から「復興・創生期間」に入った。道路や鉄道などインフラ整備は着実な進展をみせる一方、東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害や他地域に比べ遅れをとっている外国人旅行者(インバウンド)数、進まぬ被災地への帰還といった重い課題を背負っており復興は道半ばだ。

 産業が立ち上がりつつある段階で、いったん失った販路を再構築するのは容易なことではない。そこに風評被害が加わり二重の困難を強いられている。

 私は東京・下町の生まれで、大学進学を機に仙台市に移り住んだ。人生の大半を東北で過ごしており、自分自身を東北人と思っている。東北の人たちの忍耐強さや慎み深さを誇りに思う一方で少々感情的な言い方をすれば、東北人はもっと声を上げていいとの思いを抱く。

 歴史的にも東北は人材や食料、エネルギーなどの首都圏への供給基地であったとともに、中央依存の体質が続いてきた。そんな東北に甚大な被害をもたらしたのがあの大震災である。

覚悟を込める


 だからこそ、東北は自立的な復興を遂げなければならない。震災関連の復興予算の大幅縮小が不可避だからだけではない。私たち自身が東北を取り巻く現状をしっかり受け止め、どんな地域像を描くのか明確にすることが地域の持続的な発展へ向けた一歩となる。

 震災を機に、人々の価値観は変わった。物質的な充足感だけでなく、安心・安全はもとより、心や暮らしの豊かさに重きが置かれるようになった。

 こうした変化を地域の将来像にどう投影させるか。あるいは地域に生まれた絆や交流といった、これまでなかった新たな動きを地域経済として持続的に生かすには―。議論の末に取りまとめたのが東北経済連合会の新たなビジョン「わきたつ東北」だ。そこには地域に対するエールと私たちの覚悟が込められている。

復興のファインダー


【宍戸製作所】
 津波で甚大な被害を受けた宍戸製作所(宮城県亘理町)は、震災後の特需が一段落したものの、いまだ復興に向けた多くの仕事に追われる。「仕事は楽しまなければ」と話す宍戸義明社長。
自作の治具により作業効率を上げる事が出来ると宍戸義明社長


【菊池製作所・南相馬工場】
 菊池製作所の南相馬工場(福島県南相馬市)。作業者の腰の負担を軽くする着用型筋力補助装置「マッスルスーツ」を世界に向けて量産する。メードイン福島、メードイン南相馬へのこだわりを示す。
「マッスルスーツ」を量産する菊池製作所の南相馬工場


【雪ヶ谷精密工業】
 震災後初となる新卒採用を決めた雪ヶ谷精密工業(宮城県気仙沼市)。工場長が内定者に社内を説明していた。津波で工場が流出したが、14年9月、山間に移って新工場を稼働した。
雪ヶ谷精密工業、新工場の前に立つ内定者

(写真=田山浩一)

日刊工業新聞2017年3月7日

神崎 明子

神崎 明子
03月08日
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特に心に響いたのは「東北人はもっと声を上げていい」との言葉。主体性を促すだけでなく、地域に寄せる深い思い、あるいは複雑な思いが伝わってきます。

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