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業界トップ級の利益率、アステラスの「変化対応力」

畑中好彦社長インタビュー「我々の持つ機能全てで常に見直しをしている」
業界トップ級の利益率、アステラスの「変化対応力」

畑中社長

 ―2016年末に独バイオ医薬品企業ガニメド・ファーマシューティカルズ(マインツ市)を買収しました。
 「がん領域事業をさらに強固にしていく。(買収後の統合プロセスである)ポストマージャーインテグレーション(PMI)のチームは現地へ送った。こうした買収案件においては、交渉の早い段階からPMI計画も含めた提案をしている。買収はしたが欲しかった資産や人は残らない、ということでは意味がないからだ。ガニメドも今のところ順調だ」

 ―ワクチン分野における直近の出来事をどう評価していますか。
 「化学及血清療法研究所(化血研、熊本市北区)とは約35年の協業関係をもとに(事業承継の)交渉をしてきたが、さまざまな観点から中止した。UMNファーマとは、季節性インフルエンザの製品の承認可能性が極めて難しくなったことで契約を解除した。両案件とも必要な時機に意思決定ができたと思う」

 ―経営効率化へ向けた手綱を緩めていない印象があります。
 「我々の持つ機能全てで常に見直しをしている。これだけ環境が変わると、その先を行く経営をしなければ後手に回ってしまう。他社へ譲渡した方が価値を持つものは外部へ出す。(設備管理子会社である)アステラスビジネスサービス(東京都中央区)の解散も、そうした観点で決めた」

 ―日本で薬価の毎年改定が決まりました。
 「当社は新薬で生きていくので、国民皆保険の維持と革新的新薬の評価のバランスが新制度に取り込まれることが望ましい。中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)などで話し合いを続けていきたい」

 ―トランプ米大統領の発言の影響は。
 「米国内での製造を推進し過ぎると世界の供給網に混乱をきたす懸念がある。我々もシミュレーションはしているが、影響の出方は簡単には言いにくい」

 ―今後のM&A(合併・買収)の方針は。
 「従来通り。売上高のみを追う、カバー地域を広げるだけなどの案件には興味がない。無理に買収をせずとも(開発品や技術の)導入は多くやっている」
日刊工業新聞2017年2月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
外部資源を的確に活用した経営効率向上の手腕に定評があり、業界でトップ級の利益率を誇るなど結果も出してきた。ワクチン分野ではつまずきにも見える事例が重なったが、新型ワクチンの開発自体には意欲的であり今後が期待される。会社全体がさらに成長するには、複数の疾患領域で自社創製品の拡充が必須。研究開発のさらなる効率化も求められそうだ。 (日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤弘和)

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