電子カルテから医療現場に。「ヘルスケア×ICT」ビジネスは第二幕へ 

情報サービス各社が商機伺う

 情報サービス各社が、医療・ヘルスケア分野にICTを活用し、商機を狙っている。従来は電子カルテが中心だったが、より医療現場の課題解決に対応したシステムやサービスが開発されている。国も医療データを活用するための整備に乗り出すなど、今後、さらに同分野でICT需要が拡大しそうだ。各社の動きを追った。

 日立システムズは埼玉医科大学の保健医療学部と共同で医療機器の稼働状況を遠隔監視するシステムを開発した。IoT(モノのインターネット)を駆使し、さまざまなメーカーの医療機器から稼働情報を収集し、遠隔でも状況が確認できる。

 異常があった場合、臨床工学技士や医師、看護師など医療従事者の早期対処を支援する。また、埼玉医大などの運用ノウハウを基にした予兆検知技術で不調を予知し、事前対処もできる。

 実用化にあたっては3月まで埼玉医大国際医療センターで実証実験を行う。同センターにある血液浄化装置や人工呼吸器に情報収集装置を取り付け、無線通信でクラウド上にデータを集約。閲覧用のパソコンやタブレット、スマホで、これらの情報を確認できるシステムを構築する。実証結果を踏まえ、4月には商用化する予定。

 NTTデータは、スペイン子会社のエヴェリスと同国の医療機関の協力で集中治療室(ICU)のオペレーションを支援するためのICTサービスを開発した。

 患者の合併症発症を予測し、リスクスコアや診断に必要な情報を医師や看護師に提供する。発症前に予測し、情報を提供することで医療介入の早期化を目指す。

 同サービスの核となるのは、人工知能(AI)技術を活用した予測モデル。「敗血症ショック」「急激な血圧低下のエピソード」「低酸素血症」の3症例を対象に、発症するリスクを発症2時間前に予測するというもの。

 予測すると即時にベッドサイドにある端末やモバイル端末に通知し、医師や看護師が確認できる。また通知の際に、症例の診断に必要なバイタルデータを同時に提供する。これにより医師がその場で迅速な診断をすることが可能となる。

 AI予測モデルは、2015年10月からスペインのヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院で蓄積した30億件以上の患者のバイタルデータなどを基に構築した。

 実用化に向けて、同病院での実証も始めた。導入後、3症例の合併症発症率をモニタリングし、導入前と比較することで効果を検証する。

 17年内の商用化を目指しており、スペインのほか、南米、北米でも実証を行う予定。さらには遠隔のICUへの適用や一般病棟での活用も視野に入れる。

 日本での展開については、「医療分野のデータ化は欧米が進んでいる。まずは欧米で商用化して、日本では医療データが整備されたタイミングで提供する」(技術開発本部)としている。
(文=松沢紗枝)

日刊工業新聞2017年2月15日

村上 毅

村上 毅
02月18日
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「ヘルスケア×ICT」は本当に面白いテーマだと思う。端で見てても医療はムダが多いし、他の産業と比較してもITの導入が遅れている。いろいろな課題や抵抗があるのかもしれないが、そうも言っていられない状況になっていると思う。現に目鼻が利くIT各社が、医療に商機を見いだしている。これは医療が大きく変わろうとしている証左だろう。この動きに乗り遅れてはいけない、と自戒も込めて。

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