中小の知財相談ランキング、なぜ佐賀県が1位に?

「よろず支援拠点」、資金調達や海外展開など多面的な経営支援

 中小企業の知的財産取得・活用支援で地方創生へ―。特許庁の「地域知財活性化行動計画」に基づく2019年度成果目標(KPI)を活用し、日刊工業新聞社が県の経済規模などを勘案した独自指数で47都道府県「知財総合支援窓口」相談件数ランキングを策定した。件数自体は大阪府や神奈川県など大都市が多いが、指数では佐賀県が首位、次いで福井県、奈良県になるなど地方の意欲的な姿が浮かび上がる。

 実効性を高めるため、特許庁は初めて「相談件数」「弁理士・弁護士などの専門人材による支援件数」「よろず支援拠点との連携件数」の3項目について都道府県別のKPIを設定した。今回、日刊工業新聞は「相談件数」を各都道府県の「中小企業就業者+農業従事者数」で割り、指数化することで地域への浸透度合いを調べた。

 例えば首位の佐賀県。「開設から5年間は普及啓発に努めようと足で稼いだ」(佐賀県地域産業支援センター知財支援課の樋口雅裕課長)。年300―400件の周知活動を展開。県や金融機関と連携し、富士通などから講師を招いた開放特許技術を生かした新ビジネス創出セミナーを開催するなど「知財への意識が根付き、裾野が広がった」(同)。支援後もアンケート回収の徹底など、適切にフォローアップしている。

 窓口への相談を通じて、自社で商標登録まで実現した中村(佐賀県神埼市)の中村光予子代表取締役は「ブランドやネット通販など経営戦略全般でアドバイスをもらい、知財取得による安心感も得た」と話す。

 一方、相談件数に対する専門人材による支援比率では大分県、沖縄県、奈良県が上位を占めた。これら3県に弁理士や弁護士が多くいるわけではないが、専門家と連携しながらきめ細かい相談に対応し、より高度な支援サービスを提供しようという前向きな姿勢がうかがわれる。

 窓口の役割を一段と効果的なものにするのが「よろず支援拠点」との連携だろう。知財を切り口に資金調達や海外展開など多面的な経営支援を行うものだ。ただ、19年度の件数目標トップの愛知県ですら95件と2ケタ止まり。道半ばといったところだが、連携は確実に深化しつつある。

 よろず支援拠点の都道府県別の来訪相談者数全国1位の福岡県。月1000人近くが訪れる。福岡県中小企業振興センターのワンフロアに知財総合支援窓口も同居する強みを生かし、よろず主催のセミナーに知財を取り入れるなど「相互補完関係ができている」(福岡県よろず支援拠点の佐野賢一郎チーフコーディネーター)。

 今回の調査・分析で分かったのは、知財専門家が少ない地方でも地域の実情を踏まえた支援に取り組み、中小企業の生産性向上や地域経済の活性化につなげようという動きだ。総じて西日本の活動が比較的活発だ。

 特許庁は「毎年度、目標の達成状況を点検し、見直すとともに農産品の特許出願や知財に着目した地域金融機関の融資件数など、各地域の特色を反映した新たな目標も設定していく予定」(特許庁の木村聡総務課長)。各窓口が競い合うようにサービスを充実させることは中小企業にも好影響を与え、地方創生の起爆剤になる。
                

                

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(文=鈴木真央)

日刊工業新聞2017年2月14日

三苫 能徳

三苫 能徳
02月15日
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連携がうまく進まないのは、「よろず拠点」「知財窓口」の受託機関の関係にも背景がありそう。記事中の福岡県のように同一機関が受託していたり、佐賀県のように隣接していたりすれば文字通りワンストップの対応になる。しかし、受託機関同士に“距離”がある(遠くて不便、どちらかが熱心でない、一方が極端に人不足とか)とすれば連携の阻害要因になるのかも。
連携件数という「量」だけでは必ずしも評価できないとは思いますが、件数が増えることで連携体制が強くなり、結果として「質」も良くなっていくと期待したいです。

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