なぜ山口大学は全国に貢献する教育機関になれたのか

岡学長に聞く知財教育の成功モデル

 地域重視の国立大学にとって、特定テーマで全国での貢献に直結する、数少ない成功事例の一つが山口大学の知的財産(知財)教育だろう。産学連携の中で強めてきた特色であり支援対象も全学学生、中高教員、全国他大学の教員と広がった。そんな実績を持つ同大の岡正朗学長に「活動は地域、全国、世界と区分けするものではない」という思いを聞いた。
「活動は地域、全国、世界と区分けするものではない」と岡学長

 ―山口大の知財教育は特許、著作権、意匠とバランスがよく、政府も期待しています。
 「最近では中高校の教員が生徒に知財教育できるように後押しする講習を始めた。また全国の教育機関や県内の中小企業向けの特許相談窓口『山大ホットライン』を設置しており、国の各機関との連携にもつながった」

 ―知財や技術経営(MOT)の蓄積を生かした新事業創出の人材育成に乗り出しました。
 「理、工、農の各学部を横断する大学院創成科学研究科を16年度に開設し、起業家教育の実践の場としてイノベーション道場『志』を立ち上げた。学生に中小企業の社員や起業家が加わり、議論をして試作に取り組む」

 「学生は米・シリコンバレーを訪問する一方で、地元企業へのインターンシップ(就業体験)にも参加する。世界でも地方でも能力ある人は活躍できるし、両方をつなげて考えられる」

 ―15年度開設の国際学部でさえ、地域視点が入っています。
 「特色は1年間の留学と、県内中小企業や自治体で行う課題解決型学習のプロジェクト・ベースト・ラーニングだ。学生は文系8割、理系2割の文理融合型。『現地のタイ語が話せるようになり、留学が楽しくなった』という学生のたくましさに驚いている」

 ―地元企業への就職増に向けた取り組みはいかがですか。
 「学生の調査でショックだったのは、『知っている県内企業が5社以下』が9割だったことだ。そこで近隣大学もあわせた1、2年生と地元企業の交流会を開いたところ、『こんなふうにアピールするものとは知らなかった』という中小企業が出てきた。学生にも中規模の組織での大胆な取り組みに向くタイプがいる。大学がいろいろな選択肢を用意できるようにしたい」
【略歴】岡正朗(おか・まさあき)81年(昭56)山口大院医学研究科博士課程修了、同年同大医学部付属病院助手。86年医学部講師、93年助教授、96年教授。10年医学部付属病院長。14年学長。山口県出身、66歳。

日刊工業新聞2017年2月2日

日刊工業新聞 記者

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02月13日
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学生や県職員、企業関係者などどんな相手にも気さくに声をかける。相手に合わせて話を聞き、やる気にさせる能力が抜群だ。産学連携では一筋縄でいかない医工連携を、早い時期からリードした。そのコミュニケーション力は、大学改革でも強力な武器となっている。
(日刊工業新聞科学技術部・山本佳世子)

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