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もう“荷物”じゃない!機内でも愛犬と一緒に過ごせる旅

変化する旅のニーズ(上)
 1月末の成田空港。空港には珍しく、犬を連れた旅行者が日本航空(JAL)の国内線カウンターに集まっていた。
 JALとイオングループのイオンペットがこの日に開催した「JALワンワンJET」は、愛犬と機内で過ごせるチャーター便で、鹿児島を訪れるツアー。
 ツアーに参加したのは、63人とペット32匹。ペットはトイプードルやミニチュアダックスフントなど、小型犬がほとんどだ。このツアーに愛犬(マルチーズ・7歳♂)とともに参加し、取材した。

 出発地の成田空港は、ターミナルの中ではペット禁止なので、クレートなどに入れて、移動しなければならない。愛犬はこれまで、クレートに入れたまま長時間移動するということがほとんどなく、慣れないためか、中で「キュンキュン」泣いてしまい、ちょっと困ってしまった。
 ただ、集合場所に行くと、参加者が集まり、人間もペットも賑やかで、安心した。受け付けを済ませ、専用のオリジナルクレートと搭乗券を渡された。愛犬の分もある。
   

 犬を飼い始めて17年になるが、飼い始める前と後では、外出の回数が大きく減った。公共交通機関はまず使えないし、自家用車で行ったとしても、宿探しは一筋縄ではいかない。あれこれ考え、結局断念することが多い。
 公共交通機関の中でも難易度が高いのが、飛行機だ。ペットは荷物として預け、貨物室に載せられることになる。ペットが載せられる場所は、温度調整などはきちんとしているし、事故などもほとんどないが、わずかな時間でも離れるのは不安だし、飛行機は気圧の変化もある。飛行機が使えないと、遠出はまずできないので、どんどん出不精になっていく。ツアー参加者からも「貨物室に預けるのが不安なので、ペットと一緒に飛行機に乗れるツアーはありがたい」という声が聞かれた。

 ただ、ペットを客室に入れるチャーター便を運航するには、苦労もある。
 JALでは、チャーター便の運航にあたり、ペットアレルギーなどに対応するため、全ての座席カバー、レールカバーを外し、クリーニングした。行きと帰り、一回の運航ごとに、全てクリーニングしたという。担当者は「細かいところまでクリーニングするため、関係部署との調整にも時間を要した」と話す。

 今回のチャーター便「JAL1111(ワンワンワンワン)便」は、地上スタッフも客室スタッフも、ペット好きが選ばれたとのこと。
搭乗した機内には、愛犬の名前が書かれたかわいらしいヘッドレストカバーや、ペット用のおやつ、いっしょに乾杯できるワインまで用意されており、参加者から歓声が上がっていた。
   

 離発着の際は、ペットをクレートに入れ、シートベルトを付けて固定する。ここでも、クレートに入れたままになるので、愛犬が落ち着かず、キュンキュン泣いてしまう。機内には、あちこちから泣いたり、吠えたりする声が聞こえた。

 機体が安定すると、クレートから出してもとよいことになり、愛犬の機嫌も戻った。ほどなく機内では、男の子は機長、女の子は客室乗務員のコスチュームを着て、記念撮影が始まった。愛犬は男の子なので、機長のコスチュームで、ご満悦の様子。運航中は、何度か客室乗務員が声をかけてくれたり、ツアーに同行している獣医が健康チェックをしてくれた。気圧の変化があるので、少々不安だったが、万全の体制が整っているのも心強かった。
   

 運航中は、客室乗務員とペットで記念撮影する姿などがあちこちで見られ、機内はずっと賑やかだった。
   

 ペットと愛犬家にとって、至れり尽くせりのツアーは、2泊3日、4名1室で1人、14万8000円~と、国内旅行としては若干高めの金額だが、12月中旬の発売と同時に完売し、キャンセル待ちも100人以上あったという。参加者からも「高いとは感じない」という声が多かった。

 JALでは今回のツアーを企画した背景について、「ペットの数が15歳未満の人口を超えたというデータもあり、三世代旅行や一人旅など旅行形態が多様化する中、新たな需要の取り込みにチャレンジした」と話す。ワンワンJETは、多様化する旅のニーズを模索する中で生まれた、新しい旅の形の一つと言えそうだ。JALは今後について、今回の結果を検証し、次回以降の開催を検討するとしている。
ニュースイッチオリジナル
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
欧米では飛行機や電車、バスなどの公共交通機関で、ペットが一緒に乗っている光景をよく見かけるのですが、日本ではできません。うらやましいなと思いつつも、よくしつけられているペットの様子を見ると、我が身を振り返ってしまい、やっぱり難しいよな・・・と思ってしまいます。

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