リコーは複合機依存から脱却できるか

三浦善司社長に聞く。有望な新事業を有していても投資家の目は厳しい

 ―事務機器の工場閉鎖を含む構造改革を発表しました。
 「次の3カ年は構造改革に集中し、利益を上げる。事業を縮小して企業を再生するのは本意でない。2020年、30年と存続が望まれる会社になるため、環境や医療などの社会課題を解決する事業を育成する。脳磁計などもあり、大赤字にならない限り続ける。3カ年で利益を上げ、長期視点で経営のできる形を作る」

 ―複写機市場の先行きをどう見ますか。
 「それほど明るくはないが、プリント自体はなくならない。ビジネスのやり方によっては伸びる。製品を売るだけでは、安売りになって市場をなくすことになる。サービスやソリューションを組み合わせる。競合各社の狙いも同じだが、当社は直販・サービス網が強みになる。一方、インターネット販売を手軽な購入の窓口として活用する」

 ―生産規模はどうなりますか。
「生産の自動化や合理化も行うため、プリンター類の生産量は減らない。特に日本では自動化のメリットを出しやすい」
 
 ―研究開発投資の水準は変わりますか。
 「従来と同程度の規模でやっていく。内容にメリハリを付ける。複合機やプリンターは、プラットフォーム(基盤)を共通化することで投資を減らす。減らした分を新事業に充てる。産業印刷や3次元(3D)プリンターなどへの投資は増える。中には、完全にやめるものも出てくるだろう」

 ―新事業では、幅広い技術が求められます。M&A(合併・買収)の考えは。
「商業印刷では独ハイデルベルクと、産業用印刷では日立ハイテクファインシステムズ(埼玉県上里町)といった形で、いろいろな企業と協力している。資金を使った事業などの取得は、ないとは言えないが、自社でやることもたくさんある」

 ―市場が縮小しているデジタルカメラ事業の位置付けは。
 「カメラだけではもうからない。技術を使って、新しいビジネスを創る。例えば、全天球カメラは、不動産物件を内見したようなコンテンツを作成できる」
リコーの三浦善司社長     


【記者の目・新事業一つずつ形に】
 リコーが取り組む新事業の範囲の広さには驚かされる。小型の水力発電機から、インクジェット(IJ)技術で臓器を作る基礎研究まである。ただ既存事業の成長鈍化が業績を下押しする状態では、有望な新事業を有していても投資家の目は厳しい。収益性を早期に改善し、新事業を一つずつ形にする必要がある。
(文=梶原洵子)

日刊工業新聞2017年1月19日



OA機器業界、収益強化へ事業改革競う


 OA機器や精密機器のメーカーが収益力の強化に向け、改革に乗り出した。リコーは事務機器の拠点閉鎖や本社移転などを計画。ニコンは約1000人の人員削減に踏み切る。

 10月下旬、リコーの三浦善司社長は一連の改革を発表し「(これまでの構造改革は)十分ではなかった」と厳しい表情で語った。同社の2016年度営業利益率は2・0%を想定。競合他社に比べ、その差は歴然だ。

 現在の1ドル=110円超の為替水準が続けば、16年度の業績は上振れが見込まれるが、リコー、ニコンともに構造改革に変更はない。ニコンの牛田一雄社長は11月に開いた決算説明会で「今やらなければ、さらに大規模なリストラが必要になる」と、為替変動にかかわらず、改革の必要性を訴えた。

 コンパクトカメラや新興国向けレーザープリンターの市場は厳しさを増している。カメラ業界で1位のキヤノンと2位のニコンの16年度売上高見通しは、東日本大震災や過度な円高が起きた11年度より下回る。またレーザープリンターの販売比率が高いキヤノンとリコーは、品ぞろえが多く、シェアも上位にあることから、市場低迷の影響は甚大だ。圧倒的だったキヤノンの利益水準も競合との差が縮まっている。

 キヤノンは目下、20年に原価率45%以下にする目標を掲げ、生産改革を推進。モノづくり力によって高シェアと高収益の両立を図ろうとしている。

 一方、コニカミノルタや富士ゼロックスは製品群が絞られているため、事業効率が高く、円高を受けても一定の利益率を維持した。M&A(合併・買収)による相乗効果や、ソリューション・サービスなど“コト売り”にシフトした効果も寄与したようだ。

 今後、市場が回復しにくい製品では拠点や製品群の集約を進めるのが定石だろう。だが幅広い製品で多くの顧客と接点を持てば、新サービスを創出しやすくなるのも事実であり、難しい選択を迫られる。
(文=梶原洵子)
             

日刊工業新聞2016年12月8日

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
01月22日
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リコーは他のOA機器メーカーと比べても、事務機事業の割合が大きい。5-6年前から新規事業の育成を掲げてきたが、実施してきたM&Aなどを見ると事務機と新しい成長路線のどちらに注力するのか、どっちつかずな印象も否めない。遊休資産や三愛グループ関連の保有株など、アナリストらからはコストを絞り切れていないとの厳しい声も聞く。構造改革を行い、改めて成長の道を示せるかどうかがカギになりそうだ。

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