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消費者金融、「フィンテック」で大打撃!10年後には6割減益

駅前から店舗が消える金融業界
 2017年はITと金融の融合したサービス「フィンテック」を体現できる年になりそうだ。融資やマーケティング、資産運用で人工知能(AI)やビッグデータが実用化される。一方、テクノロジーの普及はコスト革命を引き起こしつつあり、金融機関はビジネスモデルの再構築を迫られる。駅前から消費者金融や銀行の店舗が消える日はそう遠くないのかも知れない。
 
 「正直、どの程度普及するか想像がつかない」。みずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長は言葉と裏腹に、新たな「融資文化」を実現する自信を隠さない。

 みずほFGはソフトバンクグループと17年前半にスマートフォンを使った新しい個人向け融資サービスを始める。顧客の学歴や職歴、口座の入出金履歴などをAIを活用してビッグデータ分析する。個人の信用力をスコアリング(得点化)し顧客ごとに貸出金利や上限額を決める。

 事業モデルは消費者金融に近い。他のメガグループも参入している領域で競争は激しいが、店舗を持たず、人員もほとんど置かないことで経費を削減しながら競争力のある金利を実現する。

 「みずほFGはこれまで自社で消費者金融を抱えていなかった。他の銀行グループも同様のサービスを考えているだろうが、追随しようにも従来の消費者金融の店舗などの固定費負担が重くのしかかっていて動きづらい」(アナリスト)。

 とはいえ、ネットを活用した融資モデルが、顧客が「金利よりも資金繰り」を重視するような消費者金融の世界を変えるのは間違いないだろう。米マッキンゼーの試算によるとフィンテックの普及で最も影響を受けるのは消費者金融という。グローバルでの試算だが、25年に15年と比べて収入4割、利益は6割減になるという。

 ITを活用した融資業務が消費者金融を端緒に現実になれば、日本の金融業務の姿も一変する。銀行の店舗戦略も大きく変わる。三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長は「店舗はなくならないが二極化していくだろうと」指摘する。

 人員を軽量化した店舗と対面型の顧客相談対応が手厚い店舗に分かれ現在のように必ずしも画一的に駅前に立地する必要はなくなる。

 りそなホールディングスの東和浩社長は、「AIの活用は(差異化要素でなく)もはや当たり前になる」と語り、ITでは補えないコンサルティング業務を先鋭化させる方針だ。
日刊工業新聞2017年1月1日金融面一部加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
銀行は本当に変わるのかの問いに多くの幹部は変わらなければ生き残れないと口をそろえます。規制業種とは言え、旧態依然とした業界が本当に変わるのか。その変化の象徴的なものが、店舗形態でしょう。

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