キッコーマン名誉会長が語る不確実性の時代「経済の『基礎体力』高めよ」

茂木友三郎氏インタビュー「首相は世界経済の安定化へ手腕を」

 ―世界経済に大きな影響を与える米国の新政権をどう見ますか。
 「トランプ氏はビジネスマンだけに、ビジネスは『空想』だけで成り立たないことを自覚しているはず。現実を直視する過程で自身が納得すれば、環太平洋連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉といった保護主義的政策は軌道修正されると信じたい」

 「むしろ国際政治の場面で期待するのは日本のリーダーシップ。G7(先進7カ国)でドイツ・メルケル首相に次ぐ在任期間を誇る安倍晋三首相は国際秩序や世界経済の安定化へ手腕を発揮してほしい」

 ―国政選挙を控える欧米諸国でくすぶる保護主義的な動きは世界経済の波乱要因です。
 「だからこそ日本は、振幅の大きな世界情勢に翻弄(ほんろう)されない経済の『基礎体力』を備えることが不可欠だ。政府は構造改革、規制改革を進め、民間は『革新』と『差異化』によって新たな需要を創造する。官民それぞれが役割を果たすことで潜在成長率を高めることができる」

 ―構造改革の進捗(しんちょく)をどう評価しますか。
 「農業改革は大規模化やコスト削減で一定の評価ができる。日本人の勤勉性が発揮できる競争環境を整えれば、さらに強い農業が実現できる」

 ―消費を「起点」とした経済の好循環はなかなか実現しません。
 「賃上げで消費を促す政策は(好循環実現の)突破口としては間違っていない。ただ、永続するには需要創造を通じた企業の付加価値向上から収益増・分配力増、そして消費拡大というサイクルを確立しなければならない。(一時的な消費喚起策にとどまらず)需要創造による国内総生産(GDP)向上が不可欠だ」

 ―生産性向上も重要課題です。
 「生産性向上の議論は、いかに効率を高めるかに目を奪われがちだが、やはり(分子にあたる)付加価値を高めることの意義を強調したい。企業の統合・再編を通じて経済全体の生産性向上を促す視点や米国の5割程度にとどまるサービス産業の生産性向上も課題だ」

【記者の目・底力高める努力を】
 米国新政権の経済政策への期待から企業経営者の景況感は上向きつつある。好調な米経済を追い風とすること自体は悪いことではないが反面、トランプ効果への期待が過剰な気がしてならない。茂木氏が指摘するよう日本は経済の底力を高めることに力を注ぐべきだ。
(聞き手=神崎明子)

日刊工業新聞2017年1月11日

神崎 明子

神崎 明子
01月12日
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トランプ米次期大統領がメキシコに新工場建設を進めるトヨタ自動車を批判したことについても茂木名誉会長は「自由貿易の推進は米経済にとっても必要不可欠であることを時間をかけて説明していくことが重要」との見解を示しています。

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