未完の大器「ペロブスカイト太陽電池」、パナソニックが実用化へ

課題の耐久性向上に成功。ビジネス化へ大型化などに取り組む

 パナソニックは、次世代太陽電池の本命とされる「ペロブスカイト太陽電池」の耐久性向上に成功した。ペロブスカイト太陽電池は発明から10年足らずで、普及が進むシリコン系と肩を並べるまで変換効率が急上昇している。最大の障壁だった耐久性の課題解決に突破口が見えたことで実用化へのハードルが下がった。

 パナソニック先端研究本部新機能材料研究部の松井太佑主任技師が、スイス連邦工科大学ローザンヌ校との共同研究でペロブスカイト太陽電池の耐久性を高めた。85度Cの環境で500時間連続して発電させる試験を行い、光を電気に変える変換効率は初期効率に対して95%を維持した。通常の使用環境に置き換えると「2―3年に相当する」(松井太佑主任技師)という。

 ペロブスカイトは特殊な結晶構造の名称。桐蔭横浜大学の宮坂力教授が、太陽電池として作動することを発見した“日本発”の技術だ。宮坂教授が2009年に作製したペロブスカイト太陽電池の変換効率は3%台だった。12年に10%を突破すると世界中で研究に火が付き、現在は20%を超えた。

 松井氏らも共同研究を始めてから約3年で、21・6%(4ミリメートル角)の変換効率をたたき出した。量産レベルで24%のシリコン系太陽電池の背中が、あっという間に見えた。

 ペロブスカイト太陽電池は従来の太陽電池と比べ材料費が安く、材料を基板に塗って作製できるため製造コストも低い。電気を作る発電コストをシリコン系の「2分の1―5分の1」(同)に低減できる可能性がある。
                


 “塗って作る”ので、さまざまなモノを発電に利用できるのも魅力だ。フィルム、ウエアラブル機器、窓、建物の壁面、自動車、室内の家具など、太陽光発電の用途の広がりが期待されている。

 ただ、耐久性が難点だった。劣化が早く、数時間から数日で変換効率が低下していた。松井氏らは構造の歪みが原因と考え、結晶をちょうど良い大きさにできる材料を探索。候補の中から金属のルビジウムを選んで入れた。

 すると結晶の粒が大きくなり、構造が安定し高い耐久性を実現。また、欠陥がないきれいな発電層となり、電気として取り出す前に消える電子が減り、効率も高まった。

 シリコン系を目安とすると、20年間で80%前後の効率維持が求められる。松井氏らは耐久性向上とともに、大型化にも取り組む。基板に塗った材料を均一に乾燥させる工法が必要となりそうだ。

 これまでペロブスカイト太陽電池の研究成果は、研究機関が発表してきた。おそらく太陽電池メーカーの発表は、パナソニックが初めて。太陽電池ビジネスを知り尽くした同社の研究開発は、実用化への大きな前進となった。
(文=松木喬)

日刊工業新聞2017年1月11日

松木 喬

松木 喬
01月11日
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昨年末、兵庫県立大学大学院が100度Cで2600時間の耐久性を確認したと発表しました。ただし、変換効率は8%でした。パナソニックのペロブスカイト太陽電池は500時間の耐久性の確認ですが、20%近い効率を維持しました。未完の大器であるペロブスカイト太陽電池は変換効率から耐久性の競争へステージが移りました。

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