日本開催、国際ロボット競技大会は研究人材を広げる好機だ!

主催の経産省を中心に省庁の壁を越えられるか。ODAの活用も

 2017年はロボット研究者にとって忙しい1年になりそうだ。内閣府などの大型研究予算の執行が佳境となり、国際ロボット競技大会「ワールドロボットサミット(WRS)」では18年プレ大会に向けて大学や企業でチーム作りが進むためだ。WRSは20年の本大会で10―20の国や地域から100を超えるチームの参加を目指す。海外に人脈をもつ研究者は海外の研究機関と組んで出場可能だ。ロボット人材の裾野を広げられるか節目の年になる。

 17年は、いずれも内閣府の主導する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)と、「革新的研究開発推進プログラム」(ImPACT)が5年事業の4年目を迎える。目に見える成果が求められ、要素技術をロボットとして統合する段階だ。

 SIPでは、インフラの維持管理や農林水産業の高度化、自動運転、海洋探査ロボ、ImPACTでは介護支援ロボや災害対応ロボ、カウンセリングロボ、手術ロボなどが開発されてきた。ほぼすべての分野のロボットに投資が広がった。

技術力を世界に示す絶好の舞台


            

 この技術力を世界に示す絶好の舞台がWRSとなる。WRSを主催する経済産業省以外にも、国土交通省や農林水産省、厚生労働省、文部科学省、総務省の各省予算で開発したロボット技術を集め、産業界や社会にみせる。省庁の壁を越え、日本の総合力が問われる大会になる。

 WRSではモノづくりやサービス、インフラ・災害対応の3分野7種目を競う。モノづくり分野では工業製品の組み立て、サービス分野では家庭や店舗での作業支援、インフラ・災害対応ではプラントの点検や人命救助が競技テーマになる。17年に詳細な競技ルールが発表され、参加チームの募集が始まる。

 参加者には、プラットフォームとなる共通の機体(プラットフォーム機)やシミュレーターなど開発環境が提供される。大学の研究者にとっては大きな資産になる。開発をサポートするシステムインテグレーターなど、大学と企業、大学と海外機関など、研究者はチーム作りに追われることになる。

 WRSはロボット開発の過程を社会にみせて、そのフィードバックを技術開発や競技設計に生かす試みだ。経産省ロボット政策室の安田篤室長は、「新しいイノベーションの起こし方を確立する」と強調する。サービス業などがロボットの導入を検討したり、一般市民がロボットが働く姿を想像したりして、社会での受容性を広げる狙いもある。

 この前哨戦となるプロジェクトが災害対応の分野で進んでいる。ImPACTの「タフ・ロボティクス・チャレンジ」では、年に2回フィールド評価会を開き、開発中のロボットを公開してきた。

 消防などの災害救助の専門家に加えて、土木や建設、プラント関連企業の技術者が参加している。実際にロボットが仕事をする姿をみせ、その限界や可能性を体感してもらう。

 研究者にとってはスパルタだ。参加研究者から「開発のペースが早すぎる」とため息が漏れるほどだ。論文に仕上げる前に次の評価会を迎え、企業技術者から厳しい注文が付く。反面、現場に即したロボット開発につながっている。

災害プラットフォーム機はビジネスにつながる


技術者が参加し、可能性を体感する(ImPACTの評価会、16年11月)

 そのためプロジェクトの中間地点にもかかわらず、20社から共同研究や開発打診などの引き合いが集まった。インフラ点検など各社のビジネスに応用されていく。

 ImPACTのプログラムマネージャーを務める田所諭東北大学教授は、「公的機関がユーザーになる災害対応はオープンに開発を進め、インフラ点検などの民間企業の事業領域はそれぞれ秘密保持契約を結んでもらっている」と説明する。

 災害対応とインフラ保守は現場や仕事が似ているため技術を見極めやすい。民間の事業領域は技術や特許を囲い込めるようにして、オープンとクローズの好循環を作る。

 WRSも国際大会に向けた技術開発と、その技術の事業化が肝になる。WRSでは、共通の機体となるプラットフォーム機を広く提供する。メーカーにとってみれば、機体を提供すれば、その機体をベースに各国で技術者が育つ。デファクトスタンダード(事実上の標準)を抑えられる可能性があるものの、予算確保が課題になっている。

また海外チームの参加も課題だ。実は日本の大学でロボットを学び、母国で教壇に立っていたり官僚として出世している人材は少なくない。

 そこで政府開発援助(ODA)などの海外投資予算に注目が集まっている。ロボットはいずれ生活や防災のインフラになる。海外人材を育てることとプラットフォーム機の普及は両立する。プラットフォーム機の更新や新しい用途の開発が続くため、対象国とは息の長い関係を築ける。

 田所教授は「防災や命を救う現場に日本の技術を届けたい。感謝を集めるだけでなく、ロボットでビジネスを興すチャンスもみせられる」と期待する。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2017年1月4日

日刊工業新聞 記者

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01月05日
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ロボット革命の実現に向けて省庁横断的に施策が走っています。研究開発は2020年までに実現できることと難しいことが整理されてきました。社会実装や事業化・産業化が重みを増していて、政策と絡めたスマートな社会実装戦略が求められています。これまで国交省や厚労省、経産省などがロボット導入支援を行ってきましたがいずれも国内の市場喚起が中心、海外は手薄でした。また霞ケ関には省庁横断的な連携が強く求められているのに「外務省はロボットで汗をかいているのか」という声は存在します。プラットフォーム戦略と海外支援を絡めた政策を描ければ、稼げるODAができるかもしれません。WRSまで時間がないので実現するか不透明ですが、可能性はなくはないと思います。
(日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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