米国で開発進む新構造の高効率エンジン「対抗ピストン」とは?

文=飯塚 昭三(日本自動車研究者ジャーナリスト会議会長)

 米国では2025年までに乗用車と軽貨物車の企業平均燃費を1ガロン当たり54.5マイル(約23.2km/L)以上という基準を満たすことを求められている。いわゆる「CAFE 2025」という規制だ。排気量の小さなクルマが多い日本の感覚ではそれほど問題ないように感じられもしれないが、CAFEというのはメーカーとしての平均値であり、米国のように4L、5Lエンジンが当たり前の国では、ハードルはかなり高い。

 自動車メーカーは独自にこれを解決すべく取り組んでいるが、それとは別に新構造の高効率エンジンを研究開発しているベンチャー企業がある。それがカリフォルニア州サンディエゴにある「アケイティースパワー社(achates POWER)」だ。そのエンジンとは「対抗ピストンエンジン」である。

achates POWER本社


 対抗ピストンというとスバルやポルシェのような水平対向エンジンを思い浮かべるかもしれないが、実は全く異なる。通常の水平対向エンジンはピストン頂部が外側を向いているが、対抗ピストンエンジンは互いに内側に向いており、燃焼室を挟むように動く。基本的には圧縮着火のディーゼルエンジンだが、2ストロークエンジンというのも大きな特徴だ。

対抗ピストン


 このエンジンはピストン同士が挟む空間が燃焼室になるので、普通のエンジンのようなシリンダーヘッドの燃焼室がない。実は熱エネルギーの損失の中で燃焼室の冷却損失というのが大きな割合を占めている。これだけでも大幅な効率のアップが見込める。2ストロークであるから毎回燃焼で、4ストロークエンジンの2倍とまではいかないが排気量に対して1.6倍以上の出力が見込める。

シリンダー


 2ストロークということで気になるのが排気ガスの問題だが、吸気ポートと2つのピストンが作り出すタンブル(縦流)やスワール(横流)で空気と燃料がよく混合されるので良い燃焼が得られ、結果クリーンな排ガスが達成できている。

 会社は2004年に設立され、自動車メーカー出身の何人もの技術者や学者が加わって研究開発が進められている。出資金はアメリカのエネルギー省から授与や陸軍のプロジェクトとして採用され資金を得るほか、複数のベンチャーキャピタルが出資している。GMも内容を評価してこれを支援しており、今後の展開が興味深い。

【略歴】
東京電機大学機械工学科卒。出版社にて自動車書籍、雑誌の編集に携わる。モータースポーツ誌の企画創刊、編集長歴任。現在はテクニカルライターとして活動。日本自動車研究者ジャーナリスト会議(RJC)会員、モータースポーツ記者会会員。

ニュースイッチオリジナル
achates POWER

昆 梓紗

昆 梓紗
01月04日
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飯塚氏が2016年に米国の自動車系サプライヤー視察ツアーに参加した際のレポートです。

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