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まず「捨てる!」 蕎麦屋やレジャー施設にも広がる“足利流5S”とは

整頓が2番目に来る一般的な5Sと違い、処分するため清掃が先
まず「捨てる!」 蕎麦屋やレジャー施設にも広がる“足利流5S”とは

5Sを学ぶ人たちに事例を紹介する相洲楼の船戸川社長(左から3人目)

 事業承継や世代交代の際も、ボトムアップ型の改善手法「足利流5S」が役立つ―。栃木県足利市で開かれた「第3回世界5Sサミット」(菊地義典実行委員長=菊地歯車社長)で、料亭や製造業を継いだ女性社長が活用事例を披露した。「当たり前になっていることを見直す」5Sの考え方は、地域を越えてサービス業にも広がり始めている。

 足利流5Sは「整理・清掃・整頓・清潔・躾(しつけ)」の順で進める。整頓が2番目に来る一般的な5Sと違い、まず捨てるべきものを処分するため、出たゴミや汚れを清掃して効率的に整頓に移れる。

 「何からどう片付けて良いか悩んでいた時にヒントを授かった」と語る相洲楼(足利市)の船戸川嘉子社長。中島飛行機(現富士重工業)の創業者、中島知久平氏も通った100年の歴史を持つ料亭だ。先代が亡くなり、娘で若女将の侑紀さんとともに途方にくれていた中、地元経営者に5Sを紹介された。

 いつの間にか、モノの置き場と化していたロビーの改善から着手。明らかに不要なもの、使えても使用しないものは捨てるという方針のもと、7割のものを処分したことで、顧客の目にとまる憩いの空間によみがえった。

 パイプツールを組み合わせ、キャスターを付けた棚を何台か自作した。ビールなどの注文状況は、ホワイトボードに色が異なる磁石を何個か張り付けることで、種類や本数を確認しやすくした。

見慣れるとそれが当たり前になるから怖い


 従業員が動きやすくなったことでモチベーションは高まり、売上高の増加につながった。「お宝だからと触らずにいた物が多かった。改善点があっても、見慣れるとそれが当たり前になるから怖い」と船戸川社長は口元を引き締める。

 父親からバトンを受けた愛和電子(群馬県みどり市)の図子田早身社長は、2年半前に足利流5Sと出合った。同社は創業約40年のモーター、減速機の設計・製造会社。「新しいことをしたいと焦っていたが、どう変わるべきか分からない状況だった。社内を片付けることで会社の歴史が学べた」。これにより、企業としての強み・弱みを再認識できた。

 5S用語の一つ「膝から上、肩から下」は物を取りやすくするため、棚は肩の高さに抑えることを教える。図子田社長は「モノの配置を変えただけで、行動や目線が変わり、コミュニケーションが活発になることに驚いた」という。当初不安がっていた従業員も、できることから少しずつ活動を起こしている。

 指導するきむら5S実践舎の鈴木浩也氏は「5Sは競争力を高めるきっかけになる。事業継承の局面でも、決断力を養いつつ社内環境を整備できる」と力を込める。製造業にとどまらず、日本そば店やレジャー施設などでも実践が広がっている。
(文=山中久仁昭)
日刊工業新聞2016年12月13日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
企業の事業でも整理はするが捨てることができないのはよくあること。恋愛でもそうだが女性の方があっさりしていて引きづらない。やはり女性経営者や幹部が増えると、日本企業の競争力は高まるんだろう。

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