「本業が人づくり、家電製品は副業」(松下幸之助)

「働き方改革」、自分と社会との関わりをどう作るのかが問われる

 1962年2月23日。米誌『TIME』の表紙を飾った日本の経済人がいる。松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助だ。わずか9歳で丁稚(でっち)奉公からスタートして、日本一の家電メーカーを作り上げた「経営の神様」が世界に認められた瞬間である。

 ”ジャパニーズ・ドリーム“の代表格として語られる幸之助だが、最も辛酸をなめたのが「終戦後」。工場は奇跡的に空襲を逃れていたが、幸之助は公職から追放。経営の第一線からの離脱を余儀なくされた。

 意外にも、どん底の幸之助に手を差し伸べたのが戦後発足した労働組合。それまで人員整理を極力避けた幸之助に感謝した組合が連合国軍総司令部(GHQ)に追放解除を嘆願、47年に社長復帰を果たした。「企業は人なり」という経営哲学が幸之助自身を救った。

 松下電器急成長の秘密は、販売店の系列化だろう。57年に「ナショナルショップ」と名付けたわが国初の系列電器店ネットワークを構築。圧倒的な販売力の源泉になった。ピーク時には全国2万7000店を誇ったネットワークは、幸之助への忠誠心が築かせたとも言われている。

 「松下政経塾」を立ち上げ、政治家育成にも心血を注いだ幸之助は生前、経営の要諦をこう語っている。「わたしの会社は”人をつくる会社“。本業が人づくり、家電製品は副業」。経営の神様と言われるゆえんである。
(敬称略)

日刊工業新聞2015年12月18日「近代日本の産業人」より



兼業・副業の優良事例集を作成へ


 経済産業省・中小企業庁は本年度内をめどに、兼業・副業に関する優良事例集を作成する。兼業・副業の促進を通じて創業や新事業進出の増加につなげるのが狙い。開業率の向上やイノベーション創出といった具体的成果を示すことにより、個人と企業の双方に対して時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を促す。

 優良事例の対象となるのは、兼業・副業を通じて創業・起業している個人と、創業・新事業創出を奨励している企業。合計10事例程度を選び出して紹介する。

 兼業・副業の促進に関しては、イノベーションの創出や人材確保、可処分所得の増加などにつながる可能性があり、経済成長を後押しする方策として注目が集まっている。兼業・副業の促進による効果の評価指標としては開業率があるが、政府は「日本再興戦略」で10%台の開業率を目標に掲げている。

 ただ業務効率の低下や社内情報の漏えいといったデメリットが生じる懸念があり、企業の実施例は依然少ないのが現状だ。近年、日本の開業率は4―5%で推移しており、目標達成には取り組みの一層の強化が求められている。

 総務省統計局の2012年の「就業構造基本調査」によると、副業を希望する就業者は約368万人。これらの希望者が創業を目指すことにより、開業率の向上が期待できる。

 こうした現状を踏まえて経産省は、兼業・副業に関する課題抽出や効果の検証を目的に、有識者らによる研究会を10月に発足させた。優良事例集の作成・周知に加えて、研究会での議論をもとに今後の支援策を検討していく方針だ。

日刊工業新聞2016年11月17日


 

明 豊

明 豊
11月17日
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「働き方改革」では長時間労働の是正と副業解禁が柱になる。会社との関係も変わり、要は会社以外の社会との接点が増えるということ。自分で仕事を作れるような準備はできているのか、自分の暮らしをどう作るのか、自分と社会との関わりをどう作るのか、などを考えることが求められる。事例集を見てもそれは出てこない。幸之助翁の教えが実践されていれば、今、パナソニックが副業を大々的に解禁しても、おそらく本業以外の「仕事をつくれる人」がいっぱいいるはず。

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