ジャパンディスプレイは有機ELではなくやっぱり液晶推し!?

2019年にフレキシブル型投入へ

 ジャパンディスプレイ(JDI)は9日、2019年にも樹脂フィルムを採用したフレキシブル液晶ディスプレーの投入を目指すと発表した。有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーの対抗軸にする。一方で有機ELパネルも開発し、両面で対応できる体制を整える。

 都内で開いた16年4―9月期連結決算会見で明らかにした。また電子ペーパーを作る台湾イーインクホールディングスと提携すると発表した。JDIの低温ポリシリコン液晶(LTPS)技術を組み合わせて新製品を開発し、電子看板など非スマートフォン向け事業を拡大する。

 一方、産業革新機構が検討している資金支援については、本間充会長兼最高経営責任者(CEO)が「中期経営計画の数値目標策定と併せて協議している」と話した。

 16年4―9月期連結決算は為替の円高などが響き、営業損益は赤字に転落した。ただ16年4―12月期には、中国事業がけん引し黒字化を見込む。

アイフォーンのディスプレイーはどうなる?


 有機ELの液晶パネルに対する優位性を疑問視する声は根強い。自ら発光する材料を使う有機ELパネルは、画像が鮮明であることや、省エネルギー性が特徴とされてきた。しかし今では液晶パネルの技術が進化し、画質も視野角も液晶のほうが上回っている、という見方もあるほど。

 液晶に比べ劣勢に立たされる部分もある。液晶パネルのようにバックライトを搭載する必要がないため、究極的にはコスト低減できるが、足元では液晶の2倍ともいわれる。また赤と緑、青の画素パターンを塗り分けるメタルマスクを精緻に制御することが難しく、フルハイビジョン(FHD)の4倍の解像度を持つ「4K」への対応など高精細化にも不向きと言われる。

 現時点で有機ELパネルが優れるのはデザインの自由度が高い点だ。有機ELは液晶に比べ部品点数が少なくデザインの制約が少ない。また画素を形成する基板に薄い樹脂を採用するフレキシブル型は曲げ加工できる。実際、早ければ17年に登場する有機ELアイフォーンについて業界内では「全面がディスプレーで両端を曲げたデザインを採用するのではないか」との声が上がる。

 しかしデザインの自由度でも液晶パネルが巻き返しを見せる。米サンフランシスコで5月に開かれたディスプレー分野の世界最大の学会「SID」。JDIや東北大学は曲げられるフレキシブル液晶パネルの技術を披露した。JDI関係者は「液晶パネルの進化の余地はまだ大きい」と強調する。

 アップルはすでにサムスンと契約を交わしており、アイフォーンの17年モデルの一部には有機ELパネルを採用する見通し。だが液晶が順調に進化を遂げれば「アイフォーンの18年モデルは、再び液晶パネルを全面採用する可能性もゼロではない」と長内教授は指摘する。

資金支援はアップルか革新機構か


 JDIは有機ELパネルの量産投資について「主要顧客と協議していく」(本間充会長兼最高経営責任者〈CEO〉)とし、アップルから資金援助を受ける可能性を示唆する。また「中国スマホメーカーからも量産開始を促す意図で資金支援の打診がある」(業界関係者)という。

 ただJDIの有機ELパネル技術はサムスンに対し周回遅れと言われる。その状況下でアップルから資金支援を受ければ、今の下請け体質から脱却することは難しくなる。

 JDIの強みはやはり、世界の先端を行く液晶パネルだ。日本には偏光板やカラーフィルター、バックライトといった部材から製造装置までカバーする液晶産業の集積がある。これがJDIを支えており、開発環境でも海外勢と比べ優位に立つ。

 日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合し、政府系ファンド・産業革新機構の出資を受けJDIは発足した。引き続き革新機構は、JDIの経営を支援する方針を掲げている。

 有機ELの対抗軸となるフレキシブル液晶パネルを巡っては、バックライトの改良や、曲げた時の見えにくさをどう解消するかといった課題があり、実用化は容易ではない。しかしオールジャパンで〝液晶を超える液晶〟を開発し、有機ELを擁する韓国メーカーに対抗するという選択肢も検討する価値はある。そのうえで成長戦略が描ければ革新機構がJDIに追加で資金支援する意味が出てくる。

 

日刊工業新聞2016年11月10日の記事に加筆

後藤 信之

後藤 信之
11月10日
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決算説明会では本間充会長と有賀修二社長の両トップが、有機ELパネルに対する液晶パネルの優位性を強烈にアピールした。省エネ性や薄型化、デザインの自由度といった点で有機ELに真っ向勝負を挑む考え。気になるのは米アップルの動向。有機ELに傾いた同社が方針転換すれば、「やはり液晶」という流れが加速するだろう。

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