日立「おおみか工場」はIoTの聖地になれるか

プラットフォーム実装しリードタイム半減。来年度からノウハウ外販へ

 日立製作所は25日、大みか事業所(茨城県日立市)でIoT(モノのインターネット)技術を用いた改善活動を実施し、多品種少量生産を行う制御装置の一部についてリードタイムを半減させたと発表した。人や設備の能力を配慮して生産計画を自動立案する「工場シミュレーター」などを活用した。一連のシステムを自社のIoTプラットフォーム(基盤)「ルマーダ」に実装し、2017年度から順次外販する。

 大みか事業所の生産改革ではRFID(無線識別)タグを使った「生産監視」、ボトルネック工程を把握し改善する「作業改善支援」、設計最適化のための「モジュラー設計」、「工場シミュレーター」の四つのシステムを連携させた。これにより生産の見える化、分析、対策のサイクルを回し180日だったリードタイムを90日に半減させた。また生産性も30%高めた。

 まず工場シミュレーターを先行してルマーダに実装し17年度に提供を始める。多品種少量生産の効率化ツールとして、企業規模や業種を問わず提案する。

 また顧客がルマーダのデータ分析機能などを試行できるクラウドサービス「ルマーダコンピテンシーセンター」の提供を26日に始める。大みか事業所での事例などを紹介する「ショーケース」機能も備え、顧客獲得につなげる。

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日刊工業新聞2016年10月26日




現会長・社長の母なる工場


 1970年、次期社長の中西宏明は大みか工場(現大みか事業所)で日立でのキャリアをスタートさせた。昨年9月に大みかを訪れた中西。自身が日立を率いる確信はまだなかったが、社会インフラで成長を目指す中、ここが重要な拠点になる確信めいたものがあった。

 大みか出身の社長が初めて誕生する。しかし事業所長の椙山繁は「うれしさより厳しさの方が大きい」という。椙山は中西から10年遅れで大みかに配属された。敏腕設計者として、鉄鋼圧延プラントの制御システムで世界初の製品を送り出した経験もある。今は秒単位でのリードタイム短縮を考える毎日だ。

 電力や鉄道などの大型システムから小型計算機の制御装置までの多品種少量生産。しかも板金加工やプリント基板から内製化している。設計者の図面データをいかにスムーズに製造現場に落とし込むか―。その解が3次元CAD/CAMによる情報転写だった。

 屋台と呼ばれるプリント基板のセル生産現場。「昔は図面を読める人が腕のいい技術者だった」(椙山)。今はどの作業員でも、ビューワーで組み付ける部品がすぐに視認できる。電動工具は通信機能付きだ。例えばネジ締めは工具からトルクアップの信号を受け取らない限り、次の画面に進めない仕組みになっている。

 リードタイム管理に威力を発揮しているのが、04年から導入している無線識別(RFID)タグ。作業員の胸章、入荷部品、作業指導票など、事業所内のあらゆるところにタグが付いている。累計導入数は8万枚超。作業員はセル生産現場の入退室時に指導票を所定のボックスに差し込む。これにより業務工程の情報を、すべてオンラインで「見える化」した。

 昨年6月にはプリント基板現場に巨大な電子掲示板を設置、リアルタイムで約30の工程を動態監視している。10分単位で更新され、ある工程で遅れが発生すれば人員を配置換えする。常に最適を求める体制を整備しているが、「今がベストではない。世界市場を見据えコスト競争力のある生産システムへ改善し続ける」と椙山。

 今年1月。あるアフリカの資源国の視察団が大みか事業所を訪れた。スマートシティー(次世代環境型都市)などを検討しているという。グローバル競合相手は重電ならドイツ・シーメンス、ITなら米IBMなど。

 ただ大みかのようにシステム設計から製品生産までの一体工場を持つ企業は珍しい。「社会インフラ制御なら大みかを見ろ、といわれたい」(椙山)。中西個人でなく、日立全体のマザー工場になる日も遠くない。
(敬称略)
※内容、肩書きは当時のもの

日刊工業新聞2010年3月30日


明 豊

明 豊
10月27日
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中西会長、東原社長と2代続けてトップを輩出した今や日立の中核工場。6年前に日立の連載で工場内をじっくり取材した。一言でいえば、「工場らしくない工場」。何を作っているか、ぱっと見て分からないからだ。でも子細に見ていくと、とてつもないノウハウを抱えていることが分かった。中西会長はよく言う。日立が掲げる「協創」の原点は大みかにあると。最近は「IoT時代だぞ、お前たち主役だぜ」とハッパをかけている。

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