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IoT基盤に新規参入する富士電機。多くの企業に参考になるワケ

既存技術の組み合わせで安価で確実につながる
 富士電機IoT(モノのインターネット)事業に参入する。工場でのエネルギー利用の効率化や、生産設備の稼働率向上につながるサービスを提供する。既存のコア技術を使ってIoT基盤を構築し、スムーズな導入や短期間での課題解決を実現した。IoT関連売上高で2016年度に250億円、18年度に600億円を目指す。電機メーカーでは東芝も簡単に運用を始められるIoTサービスを始めるなど、導入しやすさも競争軸になってきた。

 富士電機は4月にIoT事業戦略の司令塔となる部署「IoTプロジェクト室」を16人で立ち上げた。自社開発のIoT基盤を使って、工場やプラントのエネルギーや生産設備の利用状況を診断・分析し、需要や環境条件を予測した上で最適な稼働計画などを提示する。IoTプロジェクト室と、産業インフラなどの事業部門とが連携して営業展開する。

 同社のIoT基盤は導入しやすさが特徴の一つ。工場やプラントで幅広く普及している自社製のゲートウェイを採用し、複雑な検証作業なしで生産ラインの制御機器やセンサーとクラウドをネットワーク接続できる。

 また「多変量統計的プロセス管理(MSPC)」と呼ぶ手法を使って最短1日で工場やプラントのエネルギーなどの利用状況を診断・分析する。その後のステップとなる需要などの予測、最適化策の提示についても1カ月程度で行う。

 モノづくり関連では日立製作所NEC、東芝などがIoTサービスの展開に乗り出しており、企業への導入も始まっている。一方で、明確な導入効果が見通しにくいといった理由で採用に二の足を踏む企業は少なくない。富士電機は導入のハードルを下げたサービスの提示で、導入のすそ野を広げる。
日刊工業新聞2016年9月5日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 米IIC (Industrial Internet Consortium) に昨年から加入している富士電機が"学び"モードを終えて本格的にIoT事業に参入する。目新しい技術を使うといった派手さを狙うのではなく既存技術の組み合わせで安価で確実につながるプラットフォーム構築を目指すという手法は、今から同様の取り組みを検討する様々な企業の手本になるとも言える。  子会社に富士アイティも抱える同社グループでは自社グループだけで実現できるところが多いと思うが、できることなら日本企業が常に陥る1社だけで実現するやり方ではなく、取引先や他社設備まで管理できるようなオープンコラボレーションの姿を実現してもらうことに期待がかかる。

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