下町ボブスレーを、町工場に親しむきっかけに

プロジェクトの広報担当、岸本工業の須藤取締役に聞く

 岸本工業の須藤祐子取締役は、下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会の広報担当で、プロジェクトのPRに関する仕事を引き受ける。同社は本業の樹脂加工でも協力しており、イベントに置かれる透明な募金箱は同社製だ。ソリの1号機製造時からプロジェクトを支える須藤さんにプロジェクトについて聞いた。

 ―参加して得たものはありますか。
 「私は子育てをしながら働いているため、区内企業が交流する場に顔を出す時間がとれないことも多かった。『町工場の跡継ぎ』という自分に近い立場の人と深く関われるようになったのが、大きな収穫となっている」

 ―本業に影響はありましたか。
 「海外の企業が技術の見せ方を工夫している姿に感化され、当社も見せ方を工夫するようになった。これはプロジェクトが『JAPANブランド育成支援事業』に採択されている関係で、ドイツの展示会に行ったのがきっかけ。今でも試行錯誤が続いている」

 ―1号機の部品では金属加工にも取り組んだそうですね。
 「樹脂を加工するための治具など簡単な金属加工は社内で手がけてきた。余っている図面の中で対応できる部品を、父である岸本哲三社長が加工した」

 ―現在は広報活動に力を入れていますね。
 「大田区ではマンションが増え、工場が操業しづらくなっている。プロジェクトが町工場を知って親しんでもらうきっかけになればと思っている。モノづくりの場が敬遠されるものにならないようにしていきたい」

透明なアクリル、高精度平坦加工



(切削だけで透明度を高められるアクリル加工技術を開発)

 岸本工業はアクリルなど樹脂の切削加工が主力。金属部品の中に取り込んでも影響が出ないほど高精度に加工する。近年はアクリルを切削するだけで透明にする技術を開発。研磨などが不要で精度を維持できるため、可視化部品分野での活用が進んでいる。プラスチックを広い面積で均一に加工するするフルフラット加工では特許を取得済みだ。

 図面がない仕事も受ける。長年の経験により蓄積された提案力を生かし「こういうモノがほしいんだけど」という依頼に応える。多彩なアイデアで他社との差異化を図る。

日刊工業新聞2016年8月31日 中小企業・地域経済面

斉藤 陽一

斉藤 陽一
09月01日
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 何らかの事情で廃業となった町工場の跡地にマンションが建つ。そのマンションに新しく入居してきた住民が、近隣で操業を続ける町工場に対して文句を言う-。かつて大田区の取材を担当していた頃、町工場の経営者からこうした悩みを多く聞きました。須藤さんが語っているように、下町ボブスレーのプロジェクト推進が町工場と近隣住民との融和につながるといいですね。

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