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ユニー・ファミマ、コンビニ「3強時代」へ生き残りの船出

店舗数は最大手のセブンと肩を並べる。「規模」のメリットを生かせるか
 ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(GHD)が9月1日に経営統合し、「ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)」が誕生する。コンビニエンス業界3位のファミマと、ユニーGHD傘下で同4位のサークルKサンクスが組むことで、コンビニ事業では国内最大級の企業となる。

 コンビニ業界はセブン―イレブン、ローソン、ファミマの大手3社への集約が進んでいる。ファミマは09年にエーエム・ピーエム・ジャパンを完全子会社化し、15年に合併したココストアの店舗についても、年内にファミマへの転換を完了する。

 ファミマは7月末時点で1万1872店舗を運営している。エーエム・ピーエムやココストアと同様に、サークルKサンクスの店舗もファミマにブランド転換する予定で、店舗数は最大手のセブン―イレブンと肩を並べる。

 規模を追う背景には、商品生産や物流の効率化で、商品力や価格競争力を上げられるメリットがある。店舗数の拡大を図るにあたり、ファミマは加盟店を運営するオーナーを獲得するため、シニアや単身者も加盟できるよう、制度を見直した。


日販で大差、「稼ぐ力」にはまだ弱さ


 一方で店舗の「稼ぐ力」にはまだ弱さがある。店舗の1日当たりの売り上げを示す全店平均日販は、16年3―5月期にセブン―イレブンが64万円だったのに対し、ファミマが51万円、サークルKサンクスが42万円と大きな差がついている。

 商品力を上げるためには、ベンダーを巻き込んだ商品開発が欠かせない。規模が拡大すれば、発言力も増す。

 一方で問題も起きている。ファミマは25日、公正取引委員会から「下請けいじめ」に関する勧告を受けた。14年7月から16年6月にかけて、下請け業者20社に対して、プライベートブランド(PB)の弁当やパンについて売れ残った商品の損失の一部を負担させたり、期間限定のキャンペーンでの値引き分を転嫁するなど、6億5000万円の支払いを不当に減額したとしている。

 統合を前に、コンプライアンス(法令順守)に対する姿勢について、課題が浮き彫りとなった。

沢田氏の手腕に期待


 持ち株会社であるユニー・ファミリーマートHDの社長には、上田準二ファミマ会長が就く。現在69歳で「昨年3月にはリタイアするつもりだった」としつつ、かねて業界再編を視野にユニーGHDとの統合構想を描いてきた立場から、引き続きかじ取りを担う。

 コンビニ事業を担う新生ファミリーマートの社長に就くのは、沢田貴司ファミマ取締役専務執行役員だ。事業再生会社のリヴァンプ(東京都港区)を設立し、ロッテリア(同新宿区)の再建や、クリスピー・クリーム・ドーナツ(同渋谷区)の運営に関わってきた。

 コンビニ事業に直接携わった経験はなかったが「しがらみがなく馬力がある」として、伊藤忠商事に同期入社した中山勇ファミマ社長が招いた。商品やシステム、カルチャーの違うファミマとサークルKサンクスをまとめる手腕に、期待が掛かっている。

 ローソンの玉塚元一会長とは、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングでともに経営を担った後、リヴァンプを共同設立した間柄だ。意識しないとのスタンスながら、直接対決も注目される。

 流通の第三極としての存在感を発揮し、飽和状態にある国内で生き残りを図るとともに、成長に向けて海外市場をいかにつかむか。急激に拡大したコンビニ事業で、日販を「できるだけ早く60万円に引き上げる」(中山ファミマ社長)という目標を達成し、IT導入などで「次世代コンビニ」(同)を構築してセブン―イレブンに立ち向かう体制を築けるか。直面している課題は多い。
(文=江上佑美子)
日刊工業新聞2016年8月29日「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
国内はほぼ飽和状態。コンビニ各社は商品を売るだけでなくさまざまなサービスの乗り出しているが、そういう状況でも、商品力にどこまでこだわっていけるかに注目する。だいたい等距離に3社の店舗がある時代になった。個人的には商品で、各コンビニを使いわけている。残念ながら今のファミマに、あえて行く理由はあまりなく、通りすがり購入店舗である。

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