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カメラの価値は手の感触にあり!リコーの“こだわり”を形にする執念

光造形方式の3Dプリンターで試作繰り返し。数値ではわからない感触を確認
カメラの価値は手の感触にあり!リコーの“こだわり”を形にする執念

リコーイメージングは、光造形を開発や設計に活用している(リコー総合デザインセンターの羽賀氏)

 カメラの価値は、画素数などで表せるスペックだけではない。趣味性の高い高価なカメラであるほど、手に持った時の感触や操作感も重要な要素だ。リコー子会社のリコーイメージング(東京都大田区)は、特定の光を照射して樹脂を固める光造形方式の3Dプリンターを2001年から導入し、試作を繰り返すことで“こだわり”を形にしている。

 3Dプリンター導入前、同社は全体デザインの確認のための試作を、粘土から削り出したクレイモデルなどで行っていた。加工に長期間を要し、切削加工を外部委託すると高価なため、試作回数には限界があった。これに対し、3Dプリンターはコストを抑えながら試作回数を増やせる。すでに同社の開発に欠かせない存在だ。

 リコー総合デザインセンターの羽賀正明氏は、「3Dプリンターで内部の構造や細部もデザイン通り再現でき、数値ではわからない感触も確認できるようになった」と笑顔で語る。細部まで表現するため、同社は3Dプリンターの中でも加工精度の高い製品を導入。専任オペレーターが目的に合わせて積層の厚みなどを細かく調整し、時間やコストのムダを減らしている。

 交換式レンズの設計も同様だ。例えば、レンズフードを装着する時にカチッと入るクリック感を狙い通りにするには、どんなスリットを入れるといいか。3Dプリンターで作成した試作品を実際に動かして確認できる。常に手を添える位置にあるゴム製のピントリングも、3Dプリンターで原型をつくり、多様な表面の凹凸形状を試している。

 さらに、新しい機構部品の簡単な動作確認も行える。手ぶれ補正機構では、動作するかどうかの基本的な設計の確認を3Dプリンターの試作で実施した。従来の切削加工に比べ製作期間を大幅に縮小し、設計変更が起きた場合も全体の開発期間を延ばさずに済む。

 今後も、活用範囲をコツコツと広げていく。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年7月28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
カメラは趣味嗜好性が非常に強くニーズが多様で、付加価値の乗せ甲斐があり、3Dプリンターを活用しトライアルもしやすいプロダクツ。各社とも事業環境は厳しい中で、どうやって生き残っていくか。操作感の中にはSNSの連携も入ってくるだろうし、いかに顧客体験を作り上げていくかを競い合うことになっていくだろう。

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