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「(英国からの)工場移転は難しい選択」 他国でも離脱派が広がる可能性

住友商事グローバルリサーチ社長に聞く
「(英国からの)工場移転は難しい選択」 他国でも離脱派が広がる可能性

日産のサンダーランド工場

 英国が欧州連合(EU)離脱を選択した背景と今後の日本企業への影響について、住友商事グローバルリサーチ社長の高井裕之氏に聞いた。

 ―なぜ離脱派が勝ったと思いますか。
 「国民投票は大きく分けると、経済と移民問題の対決だった。EU加盟による経済効果か、離脱による移民受け入れ制限かを問われ、英国民は離脱を選んだ」

 ―今後、EUはどうなりますか。
 「他のEU諸国にも離脱が広がる可能性がある。EUに好意的な感情を持つかどうかを尋ねた調査によると、フランス、スペイン、ギリシャなどでEU懐疑派が多い結果が出た。これから英国と同様の事態が伝播するリスクがある」

 ―経済への影響は。
 「英財務省はEU離脱の場合、2030年までに残留した場合に比べGDPを最低3・4%、最大9・5%押し下げると試算している。経済的な不利益は目に見えている。だが英国民は経済よりも、反移民を選んだ」

 ―日本企業への影響は。
「英国には1000社前後の日本企業が進出している。離脱が決まり、今後は英国と欧州大陸とのサプライチェーン(供給網)の分断が予想される。製造業は、英国の工場を欧州大陸に移すかどうか決めることになる。難しいのは、欧州大陸の中にも離脱派が支持を伸ばす国が広がる可能性があることだ。各社とも頭を悩ませるだろう」
(聞き手=大城麻木乃)
【略歴】
高井裕之(たかい・ひろゆき)80年(昭55)神戸大経営卒、同年住友商事入社。非鉄金属本部に17年所属し、うち7年は英ロンドン駐在。金融事業本部などを経て13年6月より現職。大阪府出身、58歳。
2016年6月27日2016年6月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
金融などと違い自動車などの製造業は簡単に工場を移すことはできない。ただ日産のゴーン社長は「英国がEUに残ることが雇用、貿易やコストの観点からふさわしい。未知より安定の方が事業としては有利な環境だ」と話すなど、投資を控える可能性はある。

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