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「小さなエネルギーの落ち穂ひろい」がIoT時代の電源に変わる

リコーの色素増感太陽電池、コピー機と相乗効果も
「小さなエネルギーの落ち穂ひろい」がIoT時代の電源に変わる

リコーが開発した色素増感太陽電池

 2014年末、リコーは都内で開かれた展示会に、同社となじみが薄そうな製品を展示した。テーブルに並ぶ四角いパネルは手のひらサイズで、赤、紫、黄色とカラフルな色が目をひく。同社が開発した色素増感太陽電池だ。画像エンジン開発本部の田中裕二氏が「用途を選ばなければすぐに実用化できる」と語る自信作だ。

 結晶シリコン系太陽電池は太陽光のような強い光ならば多くの電力を生み出すが、弱い光だと発電性能が落ちる。色素増感太陽電池は微弱な光でも発電性能が低下せず、照明など室内光での発電に向く。身近にある小さなエネルギーを落ち穂拾いのように“収穫(ハーベスト)”する発電は、エネルギーハーベスティング(環境発電)と呼ばれる。色素増感太陽電池は大きな電力(出力)を発電できないが、未利用の室内光を電力に変えるには最適だ。

 リコーの色素増感太陽電池の1平方センチメートル当たりの出力は13・6マイクロワット。電卓やソーラー時計に使う非結晶シリコン太陽電池より2倍多い。従来の色素増感太陽電池は電解質が液体だった。リコーは電解質をコピー機の有機感光体材料と類似した有機p型半導体と固体添加剤に置き換えた。液体が原因で色素がはがれなくなり、耐久性が向上。従来の液体型と比べ1平方センチメートル当たりの出力を60%高めた。

 田中氏は「スマートオフィス向けのスマートセンサー用途を目指す」と明かす。IoT(モノのインターネット)の時代には、あらゆる場所にセンサーが張り巡らされる。オフィスならセンサーが人の入退室、温湿度、照度を計測し、データがネットワークに送られ、電子機器、空調、照明、セキュリティー機器の自動制御で業務効率の向上に生かされる。ただし「人の検知には毎秒10回センシングする。電池交換は1カ月に1回は必要」(田中氏)という。

 20年には1兆個のセンサーが地球上に設置されるとの試算があり、廃棄される電池は膨大な量になる。
 そこで色素増感太陽電池の出番だ。センシングや通信は弱い電力で済むため、色素増感太陽電池はセンサーの電池替わりにできる。センサーは“電池レス”で稼働するため電池の廃棄がなくなる。

 色素増感太陽電池はさまざまな企業が開発に挑むが、実用的な用途が見当たらず普及に至っていない。IoT時代の到来で色素増感太陽電池の出番がやってきた。リコーの事業から太陽電池は連想しにくいが、オフィス分野は主力のコピー機と事業領域が重なり、相乗効果を期待している。
2015年1月1日付掲載記事から抜粋
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
13・6マイクロワットは0・0000136ワットです。10センチ×10センチのパネルにしても生み出せる電力は0・00136ワット。普通の太陽光パネルは1枚200-300ワットの電力をつくり出します。色素増感太陽電池は小さな、小さな電力しか作れませんがIoTを支える電源となりそうです

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