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空の覇権争う・独ルフトハンザの戦略(上)ミュンヘン増強−ハブ空港に重点投資

サテライトターミナル新設
空の覇権争う・独ルフトハンザの戦略(上)ミュンヘン増強−ハブ空港に重点投資

ミュンヘン空港のサテライトターミナル

 世界の航空市場は、覇権争いがますます激しくなっている。航空会社が国境を越えて、資本提携する動きも活発だ。ドイツのルフトハンザドイツ航空は、2000年代に欧州各国の航空会社を傘下に入れ、欧州最大の航空会社となり、フランクフルト、ミュンヘンをハブに路線を拡大。16年4月にはミュンヘン空港に自ら出資したサテライトターミナルを新設し、着々と基盤を拡充する。(3回掲載)

「ルフトハンザのサクセスストーリーを継続」


 4月下旬、独ミュンヘン空港では、サテライトターミナルの完成を祝うセレモニーが盛大に開かれた。出席者は各界から1900人におよび、吹き抜けになっているレストランの天井からつり下げられたシルクを使ったパフォーマンス「エアリアル・シルク」も披露されるなど、供用開始前のターミナルは華やかな雰囲気に包まれた。

 新設したサテライトターミナルは、主にルフトハンザが使用している第2ターミナルを増設したもの。ミュンヘン空港会社とルフトハンザの共同事業として建設され、投資額は9億ユーロ(約1100億円)。ルフトハンザはこのうち40%を出資している。同社のカーステン・シュポア最高経営責任者(CEO)は「ミュンヘン空港への投資は、ミュンヘンにおけるルフトハンザのサクセスストーリーを継続させるためのもの」と述べ、ハブ空港としての重要性を強調した。

旅客処理向上、3600万人規模へ


 サテライトターミナルは、面積が4000平方メートルで、乗降設備のボーディングブリッジは27カ所ある。サテライトターミナルの増設により、ミュンヘン空港の年間の旅客処理能力は、1100万増え、3600万人の規模となる。

 ミュンヘン空港の第2ターミナルは、ルフトハンザとそのグループ航空会社、ルフトハンザが加盟する航空連合「スターアライアンス」の航空会社が乗り入れる専用ターミナルだ。

乗り継ぎ短縮


 サテライトターミナル内には、ルフトハンザのラウンジが五つあり、まさに「ルフトハンザによるルフトハンザのための」ターミナルとなっている。

 第2ターミナルとサテライトターミナルは、所要時間25秒の地下輸送システムでつながっている。ルフトハンザとスターアライアンスの航空会社しか乗り入れないため、第2ターミナル間であれば、最短乗り継ぎ時間は35分と、国際線ターミナルの乗り継ぎ時間としては圧倒的な短さを実現した。

 航空会社にとって有利な条件での運用が可能となるのも、自ら出資しているからに他ならない。ルフトハンザは必要なものに、積極的な投資を惜しまない。空の覇権争いが激化する中、競争力の強化を着々と進める同社の戦略を探る。
日刊工業新聞 2015年06月09日 建設・エネルギー・生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
日本でも地方空港から、空港の経営の民間委託が始まっていますが、航空会社が出資すると言う例はありません。航空会社が自ら、ターミナルの運営に参加すれば、ターミナルはより使いやすく、便利になるんだなと、ミュンヘン空港を取材して感じました。

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