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自動車部品、業界再編の号砲か!

日産がカルソニックカンセイの株式売却を検討と報道
 日産自動車への供給が多い部品メーカー8社の2017年3月期連結決算は、6社が営業減益を見込む。北米の好調さが続くが、円高による為替効果が減速し、大幅な利益増が見込めないため。各社は生産合理化などを進め、利益を確保する。

 「今期も北米や中国向けの好調さが続く」(ヨロズ佐草彰取締役専務執行役員)と各社は前期同様、北米や中国が全体の業績をけん引すると予測する一方、為替による収益の圧迫を課題にあげる。

 パイオラックスは今期の為替レート1ドル=105円の設定に伴い、売上高で前期比55億円、営業利益で同6億5000万円程度マイナスを予測。「(今期日本、北米、アジア、英国で収益が下がるのは)円高が要因」(同社)と説明した。

 各社は原価低減や生産の合理化などに積極的に取り組む。カルソニックカンセイは「部品の調達コストの削減や物流、生産の効率化を進める」(秋山豊彦財務戦略企画グループ部長)とし、増益での着地を目指す。河西工業も生産性向上と原価低減活動を推進する。

 一方、ヨロズは米国で労働市場が逼迫(ひっぱく)している状況を指摘。「米国の拠点で離職率が増加し、生産性の低下が悪化しないよう対処するのが急務だ」(佐草取締役専務執行役員)とした。

カルソニックカンセイ・森谷社長に聞く


日刊工業新聞2016年2月22日


 ―2016年度は6カ年の中期経営計画の最終年度になります。
 「売上高1兆円の目標は15年度に前倒しできる見込みだが、『付加価値売上高』営業利益率7%は16年度に持ち越す。コックピットモジュールを手がける当社はステアリングコラムなど完成車メーカーから指定また支給される部品も購入して組み立てている。中計ではこうした指定部品の売り上げを実績から引いた数値を付加価値売上高として採用しており、15年度は同利益率を最低でも6%台で着地したい」

 ―16年度の事業環境をどう分析しますか。
 「米国はサブプライム自動車ローンの不透明感があるが大崩れせず、中国は小型車減税もあり16年度は持ちこたえると見る。日本は主要取引先の日産自動車が100万台超の生産を見込み、当社は年産80万台を切っても利益が出る体制を構築してきたので収益に大きく貢献する。これまでモノづくり改革や日産以外の拡販なども進めており、中計を達成できる年にしたい」

 ―ネットに常時つながる車「コネクテッドカー」や自動運転にはどう対応されますか。
 「コックピットは今後いろいろなディスプレーが採用され、人間工学に基づき見やすさや使いやすさを追求してレイアウトできるかがポイントになる。増加する電子部品は熱を発するため熱を逃がす必要があり、蓄積してきた熱交換器の技術も生かせる。自動運転のセンサーをやるつもりは全くない。当社はコックピット全体を把握しており、限られた空間で最適な部品の配置を提案できるのが強みだ」

【記者の目・他社との連携戦略に注目】
 森谷社長は欧米部品メーカーの合従連衡を脅威と認める。これまで電子製品など6事業を自前で成長させてきた。ただ自動運転などの事業動向を踏まえて先を見ると、全部自前でというわけではないとの個人的な見方を示す。新技術が求められる電子系と汎用化する部品では、他社との連携の切り口も技術や規模で異なるとし、提携戦略も注目される。
(聞き手=西沢亮)
日刊工業新聞2016年5月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
三菱自動車への出資からカルソニックカンセイの株式売却への流れ。競争領域を明確化するゴーン社長のストーリーは分かりやすい。すでに日産系の系列は大半が解体されているが、今後は日産系、独立系(総合電機メーカーの自動車機器部門を含め)を海外企業を含め自動車部品業界の再編が活溌化するだろう。トヨタはすでに系列サプライヤーの再編に着手しており、今後はホンダの出方にも注目。

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