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国内最強の小売業CEOが入社式で宣言した「ネットと店舗の融合」

セブン&アイ、鈴木氏。新入社員のオムニ部署への配属も
国内最強の小売業CEOが入社式で宣言した「ネットと店舗の融合」

あいさつする鈴木敏文セブン&アイ会長

 「世界でネットと店舗を融合したオムニ(チャネルという言葉)が使われているが、本格的に取り組もうとしているのは我々だ」―。小売り業界最強ともされるセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、毎年他社に先駆けて行う入社式も注目の的。17日に開いた今年の入社式では鈴木敏文会長兼最高経営責任者がオムニ化への熱い思いを語った。鈴木会長は「将来(同事業は)大きくなる」と強い自信を示し、新入社員のオムニ関連部署への配属も積極的に実施する方針だ。

 セブン&アイHDはネットと店舗を融合した新事業「オムニセブン」を昨年11月に開始。ネットで注文した商品のセブン―イレブン店舗での受け取りや、店頭にない商品を店頭端末で注文、店舗や自宅などで受け取る仕組み。ネットと店舗を融合し、相乗効果で売上高を拡大する「新しい業態」(鈴木会長)との認識だ。

 鈴木会長は入社式で、かつてデパートが流通の王者として君臨していたことなど流通の業態変遷を説明。その上で新入社員に「この中で最近、または1カ月以内にネットで買い物をした人は手を挙げてください」などと問いかけ、ネットでの買い物経験者が多数挙手すると「ネットでの買い物が当たり前になった」と指摘。変化の激しい流通業界で新しいことに挑戦し続ける重要さを説いた。

 今回、鈴木会長は新入社員のうち20人をグループ各社のオムニ関連部署に配属することも明らかにした。さらに「私は流通に何十年も携わってきたが、今後はそういう(経験などという)ことも関係がなくなる」と、ネット時代は過去の経験則が通用しなくなるとの見方を示した。商品開発の手法も変わるとし、「例えばこんなオモチャがあればいいとか、こんな雑巾があればいいと提案してほしい」とグループ全員が参加した商品開発を進める方針だ。

 セブン&アイはグループ各社のネット経由の売上高を2015年2月期の1600億円から19年2月期に1兆円に引き上げる方針を掲げている。

 百貨店、スーパー、コンビニと複数の業態を持つ同社にとって、ネットを軸に横断的に業態をまたぐ仕組みづくりの集大成となりそうだ。
(文=森谷信雄)
2016年3月24日生活面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
鈴木会長はコンビニを始めるときも「周囲に反対された」とよく話しています。とかく新しいことへの挑戦は懐疑的な目でみられがちですが、それをはねのけて成功例を示してほしいです。オムニチャネルをコンビニに続く〝業態〟に育てることができるか注目されます。

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