三井物産会長が語る人づくりの最高の舞台は「修羅場・土壇場・正念場」

飯島彰己氏 「変える力」と「つなぐ力」を備えた人材へ、自分を追い込め

 グローバリゼーションの時代における人づくりに言及したい。理想の人材像は、「変える力」と「つなぐ力」を持ち合わせた人材であり、この二つの能力の基礎となるのが「現場力」だ。

 「変える力」「つなぐ力」とは何か。グローバリゼーションの時代は、さまざまな変化が地球規模で複雑に連鎖する時代でもあるが、「変える力」とは、そんな複雑な変化に迅速に対応して自らが変わることに加え、周囲や社会、そして時代をも変革する能力を指している。

 また、グローバリゼーションの下での世界経済の発展は、地球規模での国と国、企業と企業、人と人とのつながりが原動力になっているが、そうしたなかで、自分自身が社会につながるだけではなく、さまざまな個をつなぎ合わせる能力が「つなぐ力」である。

 これらの力は、人それぞれが持って生まれた素質による部分も当然ある。しかしわたしは、学習や仕事を通じて身につけることも十分可能と考える。仕事の現場で習得できる能力こそが「現場力」である。

 現場力はさまざまな力が絡み合った複合的な能力と言える。その中身を明確に切り分けることは難しいが、因数分解すると四つの力が含まれている。

 ひとつは「洞察力」。これは好機と危機を察知する力であり、現場で直面する出来事の裏に潜む意味や潮流を把握する能力である。二つ目は好機や危機に際し、スピーディーに対応できる「瞬発力」。三つ目は、物事がうまく進まない時でも粘り強く取り組み、突破口を見つけて物事を動かす「行動力」。

 そして最後が「コミュニケーション力」。組織では自分で行動するだけでなく、人にもしっかり動いてもらうためにも、コミュニケーションは不可欠だ。これら四つの要素は、多くの業種・職種の人の現場力に共通するものであり、わたしはグローバリゼーションの時代に求められる「変える力」と「つなぐ力」の土台となると考えている。

 現場力をつけるうえでは、自分を追い込むことが重要だ。厳しい環境や難しい課題を抱えたギリギリの状態に身を置くことで、自身の現場力は確実に向上する。「修羅場・土壇場・正念場」こそが人づくりの最高の舞台となる。これは、若い時代に、たくさんの失敗を繰り返してきたわたしの経験則である。

日刊工業新聞2016年2月28日2016年2月26日「広角」より
日刊工業新聞電子版

明 豊

明 豊
02月28日
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昨年、執行役員になって2年しかたっていない安永竜夫現社長を32人抜きで社長に抜擢した飯島氏。安永氏は若い時代にロシアのLNG事業「サハリン2」などに携わるなど修羅場の経験が豊富。飯島氏が企業としてお手本とするのはGEという。上記の文を読むと、なぜ安永氏を指名したかがよく分かる。社長としての最高の人材育成は自分の後継者を作り、見極めること。

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