ドローン安全確保へ4月から全国講習

マルチコプター安全推進協会、健全な産業育成を後押し

 飛行ロボット(ドローン)の安全な運用による産業利用を目指す日本マルチコプター安全推進協会(JMSA、東京都港区)が始動する。ドローンを活用する企業を対象にした会員募集を開始しており、4月にドローンの安全技術講習を全国で始める。上田直生理事長は「ドローンの発展を阻害しない、現実的な安全技術の策定と啓発が重要」と強調する。

 ドローンは技術の進化はもちろん、航空法や電波法など関連する法律や条例、保険など周辺環境の整備が進む「黎明(れいめい)期」にある。

 ドローンは誰でも比較的簡単に購入でき、手軽に使えてしまう。だが、整備不良やバッテリー切れ、操作ミス、電波の制御喪失など事故要因は多い。ドローンは1キログラム以上の重量物で、これが上空から落下してくると大規模な事故につながる。また、改正航空法や電波法など法律や条令も一般人が把握して遵守(じゅんしゅ)するにはやや手間がかかる。

 このため、ドローンのビジネス利用には安全講習を受けることが前提になりつつある。安全で適法な運用への座学や実技の教育、機体の適法性検査、点検の手法などを学んだ上での利用こそが、健全なドローン産業育成に不可欠という考えだ。

協会乱立も、「安全運用を目指す多くのプレーヤーがいた方が実現が早まる」


 そんな中、ドローンの研究者やメーカーが中心となって多くの協会ができ、機体自体の安全確保や操縦のライセンス、保険制度など健全な利用に向けた自主規制の策定や安全講習の実施をそれぞれ進めている。特に東京大学大学院の鈴木真二教授が代表を務める日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、千葉大学の野波健蔵教授が会長のミニサーベイヤーコンソーシアム、メーカー主導の日本産業用無人航空機協会(JUAV)が関連協会の”3強“とされる。

 ドローン関連の協会で”後発“となるJMSA。傍(はた)目には「一つの協会にまとめた方が良いのでは」と考えるが、上田理事長は「安全運用を目指す多くのプレーヤーがいた方が実現が早まる」と指摘する。安全技術の確立が目的なら、各協会が自主的に定めても基準は似通うと思われ、改善が進めば同じ内容に収斂(しゅうれん)していくはず。さらに「切磋琢磨(せっさたくま)した方が質の良い安全技術確立につながる」(上田理事長)という。

 JMSAの特徴は中小型の回転翼機(マルチコプター)に対象を絞ったことと、ドローンの操縦術より運用面での安全技術を重視すること。今後、ドローンはセンサー技術とソフトウエアの進展で安定性が高まり、誰でも簡単に操縦できるようになってくる。そうなると、体調管理義務やオペレーターを2人以上にしてヘルメットを装着する、といった業務での配慮が重要になるためで、そうした基準作りを進めている。

 さらに、企業がドローンを使ったサービスを利用する際にも、しっかりした安全対策をとる企業を選定して契約できるような教育も進めるという。

 ドローン関連では、海外製が電波法などに違反していないかといった検査サービスや、中小企業がドローンビジネスに参入する際の助言機能なども必要になる。各協会がどこまできめ細かい対応ができるか、注目される。
(文=石橋弘彰)

日刊工業新聞2016年2月3日 ロボット面
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02月04日
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利便性とリスクはトレードオフの関係で、ドローンはそれが最も当てはまるツールだろう。簡単に入手でき、誰でも操作できてしまう半面、公共交通機関や人命に響くような重大な事故をもたらす危険性も高い。それだけに、安心して利用できる仕組み作りは最も重要な課題だ。ただ気を配らないといけないのは、ドローンを使ったアプリケーション開発は国際競争が激しくなっていること。かつてない利便性をもたらす期待があるドローンは、研究者や企業など多くのプレーヤーが技術と用途の開発競争を進めている。基準や法律などの制度でがんじがらめにしてしまうと、日本が国際競争に置いていかれる懸念がある。盛り上がるドローンブームやドローンのメリットを殺さずに安全運営につなげられるよう、あらゆる専門家が意見を出し合い、仕組み作りを進めていくことが肝要だろう。
(日刊工業新聞社第1産業部・石橋弘彰)

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