村田製作所・TDK 両社長に聞く“スマホの先”
「高機能化が頭打ちになるとは考えられない」(村田社長) 「成長鈍化も当面は部品点数の増加でカバーできる」(上釜社長)
**村田製作所・村田恒夫社長「(過去最大の投資)変更しない」
―米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)6s」の減産が報じられています。影響はありませんか。
「報道されているような内容は想定の範囲内で織り込み済み。もちろん数年前の”アップルショック“のように長引けば影響は大きくなる。ただ当時と違うのは、中国メーカーなどへ顧客のベースが広がっていること。それほど大きな影響は受けない」
―ただ中国経済の不透明感も増しており、中国のスマホ需要が低迷するのでは。
「中国でもLTE(高速無線通信)化が進み、スマホの高機能化による部品搭載数増加が続く。加えて中国のスマホメーカーは東南アジアやインドへ輸出しており、これらの国でもLTE導入が決まっている。これら新興国では(最廉価の)ローエンド品が増えるのではと言われるが、そもそも現在のローエンドは2年前のミドルクラス。中身はかなりアップグレードしている」
―スマホ向け部品需要の今後の見通しは。
「ウエアラブル機器も結局はスマホとつながることが前提。IoT(モノのインターネット)が普及していった時に、ゲートウェイとなるのは今後もスマホ。スマホの高機能化もまだまだ続く。LTEの普及に加え、(複数回線を束ねる)キャリアアグリゲーションも伸びていく。当面、高機能化が頭打ちになるとは考えられない」
―2015年度は1500億円という過去最大の設備投資を計画しています。
「変更しない。今後も年率で10%から20%の部品需要の拡大が予想されるので、似たようなレベルで投資を続けていく」
―電子部品業界ではM&A(合併・買収)が活発化しています。
「スマホ関連では、(電波を送受信する)フロントエンドモジュールに必要な部品はこれまでのM&Aでそろっており、これ以上は考えない。ただ今後注力する自動車やヘルスケア、エネルギーの分野では、不足している技術やマーケットアクセスをM&Aで埋める可能性はある。パワーエレクトロニクス分野も強化しなければならないし、半導体も興味がないことはない」
【記者の目・スマホ以外の事業拡大が課題】
超小型積層セラミックコンデンサーで50%のシェアを握り、各種部品を組み合わせたフロントエンドモジュールでも存在感を増しつつある。これらスマホ分野での強さばかりが際だつが、車向けも5年で売上高が倍増。中長期的にはこれらスマホ以外の事業拡大を、M&Aも含めどのように進めるかが課題となる。
(聞き手=尾本憲由)
―スマートフォンの成長が鈍化していますが事業への影響は。
「スマホ向けはまだまだ好調さが続く。(通信回線を束ねて)高速通信を実現するキャリアアグリケーションが始まり、端末1台当たりに搭載される部品点数が増える。台数ベースの成長鈍化も当面は部品点数の増加でカバーできる」
―スイスのセンサーメーカー、ミクロナスセミコンダクタホールディングを買収します。どういったシナジーを期待していますか。
「ミクロナスセミコンダクタはホール素子と呼ぶ材料を使ったセンサーや、ASIC(特定用途向けIC)を持つのが強み。互いの販路を使ってセンサーを拡販するとともに、ASICとセンサーをうまく組み合わせてワンパッケージ化するなどし、製品の小型化、高機能化を進めていく」
―TMR素子を使ったセンサーは自動車メーカーを中心に採用が広がっています。
「(自動車関連企業)約40社と(部品の採用に向けた)承認活動をしていて、正直想定以上の引き合いに驚いている。ロボットなど自動車以外の分野からの受注も狙う」
―2月末に取得予定のルネサスエレクトロニクス子会社工場(山形県鶴岡市)をどう活用していきますか。
「TDKの強みを発揮できる薄膜部品の主力拠点として活用し、増産対応できる体制を整えたい。薄膜部品は半導体製造と同じプロセスのため一部設備やクリーンルームはそのまま活用できる。(条件がよく)話が来たその日のうちに現地に出向き、即決した」
―薄膜部品や微小電気機械システム(MEMS)を使った部品開発を強化しています。
「小型で特性に優れており、両部品ともに需要が拡大する。ハードディスク駆動装置用磁気ヘッドで培った技術を生かす。高品質で安定供給できる企業は世界的に少なく、我々がリードしていきたいと思っている」
―今後のM&A(合併・買収)戦略は。
「モノのインターネット(IoT)分野の攻略にはセンサーが欠かせない。我々が持っていないセンサーを取り込み、品ぞろえを強化したい。自分たちで一から製品を開発するよりは、有力な企業と手を組む方が早いと考えている」
【記者の目・非スマホなどで主導権狙う】
取材の際、上釜社長が「攻めるのは私の得意分野だ」と力強く話していたのが印象的だった。実際13日には、米クアルコムとの提携戦略を発表。攻めの経営を実行することで自動車など非スマホ市場およびIoT分野で主導権を狙う姿勢を明確にした。これらの実現に向けて、上釜社長がしかけるM&Aはまだまだ続いていきそうだ。
(聞き手=下氏香菜子)
―米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)6s」の減産が報じられています。影響はありませんか。
「報道されているような内容は想定の範囲内で織り込み済み。もちろん数年前の”アップルショック“のように長引けば影響は大きくなる。ただ当時と違うのは、中国メーカーなどへ顧客のベースが広がっていること。それほど大きな影響は受けない」
―ただ中国経済の不透明感も増しており、中国のスマホ需要が低迷するのでは。
「中国でもLTE(高速無線通信)化が進み、スマホの高機能化による部品搭載数増加が続く。加えて中国のスマホメーカーは東南アジアやインドへ輸出しており、これらの国でもLTE導入が決まっている。これら新興国では(最廉価の)ローエンド品が増えるのではと言われるが、そもそも現在のローエンドは2年前のミドルクラス。中身はかなりアップグレードしている」
―スマホ向け部品需要の今後の見通しは。
「ウエアラブル機器も結局はスマホとつながることが前提。IoT(モノのインターネット)が普及していった時に、ゲートウェイとなるのは今後もスマホ。スマホの高機能化もまだまだ続く。LTEの普及に加え、(複数回線を束ねる)キャリアアグリゲーションも伸びていく。当面、高機能化が頭打ちになるとは考えられない」
―2015年度は1500億円という過去最大の設備投資を計画しています。
「変更しない。今後も年率で10%から20%の部品需要の拡大が予想されるので、似たようなレベルで投資を続けていく」
―電子部品業界ではM&A(合併・買収)が活発化しています。
「スマホ関連では、(電波を送受信する)フロントエンドモジュールに必要な部品はこれまでのM&Aでそろっており、これ以上は考えない。ただ今後注力する自動車やヘルスケア、エネルギーの分野では、不足している技術やマーケットアクセスをM&Aで埋める可能性はある。パワーエレクトロニクス分野も強化しなければならないし、半導体も興味がないことはない」
【記者の目・スマホ以外の事業拡大が課題】
超小型積層セラミックコンデンサーで50%のシェアを握り、各種部品を組み合わせたフロントエンドモジュールでも存在感を増しつつある。これらスマホ分野での強さばかりが際だつが、車向けも5年で売上高が倍増。中長期的にはこれらスマホ以外の事業拡大を、M&Aも含めどのように進めるかが課題となる。
(聞き手=尾本憲由)
TDK・上釜健宏社長「攻めるのは私の得意分野だ」
―スマートフォンの成長が鈍化していますが事業への影響は。
「スマホ向けはまだまだ好調さが続く。(通信回線を束ねて)高速通信を実現するキャリアアグリケーションが始まり、端末1台当たりに搭載される部品点数が増える。台数ベースの成長鈍化も当面は部品点数の増加でカバーできる」
―スイスのセンサーメーカー、ミクロナスセミコンダクタホールディングを買収します。どういったシナジーを期待していますか。
「ミクロナスセミコンダクタはホール素子と呼ぶ材料を使ったセンサーや、ASIC(特定用途向けIC)を持つのが強み。互いの販路を使ってセンサーを拡販するとともに、ASICとセンサーをうまく組み合わせてワンパッケージ化するなどし、製品の小型化、高機能化を進めていく」
―TMR素子を使ったセンサーは自動車メーカーを中心に採用が広がっています。
「(自動車関連企業)約40社と(部品の採用に向けた)承認活動をしていて、正直想定以上の引き合いに驚いている。ロボットなど自動車以外の分野からの受注も狙う」
―2月末に取得予定のルネサスエレクトロニクス子会社工場(山形県鶴岡市)をどう活用していきますか。
「TDKの強みを発揮できる薄膜部品の主力拠点として活用し、増産対応できる体制を整えたい。薄膜部品は半導体製造と同じプロセスのため一部設備やクリーンルームはそのまま活用できる。(条件がよく)話が来たその日のうちに現地に出向き、即決した」
―薄膜部品や微小電気機械システム(MEMS)を使った部品開発を強化しています。
「小型で特性に優れており、両部品ともに需要が拡大する。ハードディスク駆動装置用磁気ヘッドで培った技術を生かす。高品質で安定供給できる企業は世界的に少なく、我々がリードしていきたいと思っている」
―今後のM&A(合併・買収)戦略は。
「モノのインターネット(IoT)分野の攻略にはセンサーが欠かせない。我々が持っていないセンサーを取り込み、品ぞろえを強化したい。自分たちで一から製品を開発するよりは、有力な企業と手を組む方が早いと考えている」
【記者の目・非スマホなどで主導権狙う】
取材の際、上釜社長が「攻めるのは私の得意分野だ」と力強く話していたのが印象的だった。実際13日には、米クアルコムとの提携戦略を発表。攻めの経営を実行することで自動車など非スマホ市場およびIoT分野で主導権を狙う姿勢を明確にした。これらの実現に向けて、上釜社長がしかけるM&Aはまだまだ続いていきそうだ。
(聞き手=下氏香菜子)
日刊工業新聞2016年1月21日 電機・電子部品・情報・通信