波に乗れるか!?波力発電、実用化の期待高まる―コスト・安全対策がカギ

発電効率を大幅に高める次世代技術開発も進む

 波のうねりに伴う海面の上下動などを利用する波力発電。その実用化への期待が一段と高まってきた。日本近海では現状の技術で540万キロワット分の導入が可能と試算され、政府は脆弱(ぜいじゃく)なエネルギー需給構造の改善に寄与する技術としてエネルギー基本計画に「研究開発の推進」を明記。2015年に行われた一部の実証実験では、政府が掲げるコスト削減目標の達成の見通しを得た。発電効率を大幅に高める次世代技術の開発も進んでいる。

日本近海、540万kW分導入可能


■NEDO、1kW時当たり20円以下目指す
 波力発電の開発はコスト抑制との戦いだ。その歴史は古く、オイルショックによる石油危機を背景に1980年前後から本格化。複数の実証試験が行われた。ただ、発電単価は1キロワット時当たり100―数百円に上ったという。その後、原油価格が落ち着いたこともあり、採算の見通しが立たなくなり、一度は頓挫した。

 転機となったのは、00年代の後半。地球温暖化対策として再生可能エネルギーが注目されたためだ。東日本大震災の発生後、その期待はさらに大きくなった。

 波力発電への取り組みも見直され、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は実用化を促進する事業を11年度に開始。16年度以降の事業化時に「1キロワット時当たり40円以下」を見込む装置の実証を目標に掲げた。コスト抑制の難しさを踏まえ、発電単価が高い離島で導入できる価格水準に設定。実用化への突破口と考えた。

■系統電力見据え
 NEDOの事業では将来の系統電力への接続を見据え、「1キロワット時当たり20円以下」を目指す次世代技術の開発も進む。岩手県の釜石・大槌地域産業育成センターは東京大学などと共同で発電効率を大幅に高める技術の開発に取り組む。

 沖合にフロート(浮き)を浮かべ、海面の上下動に伴う浮きの動きで発電する。直前までの海面などの状況から10秒後の海面の動きなどを予測し、その周期に合うように浮きを制御。海面の上下動に共振させてエネルギーを最大限引き出す。

 ただ、浮きの制御には電力を使う。浮きがもともと持つ揺れやすい周期と海面の周期に大きな差があると、その差を埋める制御には大きな電力が必要で、装置が発電する電力量を上回る場合がある。このため、海面の上下動が大きく周期が長い時は合わせないなど、最終的な出力が最大になるよう制御する。

 同センター海洋エネルギーセンター室の黒﨑明顧問研究員は、「制御技術の採用により従来の3倍以上の発電効率が見込める」と胸を張る。低コストな装置の設置手法なども構築し、組み合わせると、量産時に1キロワット時当たりの単価が20数円に抑えられる見通しという。今後は装置の開発などを進め、17年度に実海域で実験する。

日刊工業新聞2016年1月4日 科学技術・大学面

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昆 梓紗

昆 梓紗
01月05日
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島国の特性を大いに生かせる波力発電。発電する部分にばかり目が行きがちですが、発電したエネルギーを誰がどう使うかをデザインすることも実用化が進む一助になるように思いました。

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