電力自由化間に合った!関電、来春にも電気料金値下げへ
高浜原発の再稼働、福井地裁が決定。大飯原発にも道開く
福井地裁は24日、関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止め仮処分命令を取り消すと決定した。関電が設定した基準地震動の妥当性や、国の新規制基準の不合理性などを指摘した4月の原決定を覆し、再稼働に道を開いた。関電は2016年1月下旬にも3号機原子炉を起動させる計画で、準備は最終段階に入る。
地裁は同時に大飯原発3、4号機(同県おおい町)の運転差し止め仮処分申し立ても却下した。高浜3、4号機については原告側による名古屋高裁への保全抗告申し立ても想定されるが、今回の決定により再稼働を禁じた法的拘束力は解ける。
関電は発電電力の原子力依存度が高く、福井県内に9基の原発を抱える。13年9月に大飯原発4号機が定期検査に入って以降、全基稼働を停止していた。原発の長期停止で燃料費の高い電源構成となり、4期連続の経常赤字につながっていた。
電力の供給力不足も関西地域の産業に広く不安を与えた。2度の電気料金上げも、製造業をはじめ企業経営を圧迫する大きな要因となり、地域産業の停滞も引き起こしていた。関電は原発再稼働後、来春にも電力料金引き下げを予定する。
関電は原決定の誤りを指摘し、安全性は確保できていると主張していた。また原決定では、国の新規制基準に対する不合理性にも言及していたため、司法の見解に注目が集まっていた。
関西電力は高浜原発3号機(福井県高浜町)について、2016年1月下旬にも原子炉を起動し、2月の発送電開始を目指す。原子力依存度の高い関西地域で電力供給不安の解消につながるほか、来春以降の料金引き下げも期待できる。4期連続で経常赤字が続く関電にとって経営安定化への貢献は大きく、価格競争力の回復も見込める。
関電は運転停止の法的拘束力が解けたことで、3号機の燃料装荷を25日に開始する。24日中には原子力規制委員会(NRA)の保安検査に着手した。並行して国際原子力機関(IAEA)の査察も受けて、約1カ月後の原子炉起動を予定している。
22日には福井県の西川一誠知事が再稼働同意を表明し、地元同意の手続きは完了。再稼働への壁は、司法判断のみとなっていた。
関電は当初、高浜原発3、4号機の11月再稼働を目指したが、想定よりも検査準備に時間を要した。このため燃料装荷前までに済ませる使用前検査3号検査を終えたのは17日。結果として仮処分の有無は、再稼働の時期にほぼ影響しなかった。
関電の原発運転は13年9月に大飯原発4号機(福井県おおい町)が停止して以来。供給力の不足に姫路第二発電所(兵庫県姫路市)の完成前倒しなどで電源確保を努めた。しかし夏冬の需要期は節電や他社融通に頼るなど供給は”綱渡り“。関西の産業活動にも電力不安が影を落とした。
3号機の稼働で月60億円の収支改善効果が見込まれる。3号機に約1カ月遅れて使用前検査が進む4号機や新規制基準の審査が大詰めの大飯原発3、4号機も運転すれば経営の安定化効果は絶大だ。
原発運転停止期間中の2度にわたる電力料金引き上げで大口顧客の離脱も進んだ。発電コストの安い安定電源の復帰により、料金引き下げの原資も確保できることから、新電力各社に対しても価格競争力の回復が望める。
関西電力高浜原子力発電所(福井県高浜町)3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定が覆ったことで、東日本大震災を踏まえて国が定めた新しい規制基準の合理性が認められたことになる。同基準に沿って原発再稼働の是非を判断する原子力規制委員会の審査手続きについても、妥当性が裏付けられた格好で、日本の原子力政策や原子力事業にとって大きな意義を持つ。
4月に運転差し止めの仮処分決定を下した同地裁の樋口英明裁判長(現在は名古屋家裁に異動)は、関電の安全対策に不備があるとしたほか、国の新規制基準についても合理性を欠くと指摘した。
このため、関電側の異議申し立てを受けた異議審では(1)原発の耐震設計で基準となる地震の大きさを表す「基準地震動」の妥当性(2)原子力施設内の設備の地震に対する安全性(3)使用済み核燃料プールの耐震性―に加えて新規制基準の合理性そのものが大きな争点となった。
原発に関する新規制基準では、これまであまり厳格に定めていなかった地震や津波などの大規模な自然災害への対策、さらには重大事故への対策に関する基準を明確に規定。関電はこの趣旨を踏まえて「さまざまな不確かさも考慮し、地盤の固さなど地域の特性を踏まえて」の基準地震動の算定など慎重な対応を主張してきた。
同社の主張が認められたことで、新規制基準の合理性と、この基準に基づいて一足先に運転を再開した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機を巡る安全対策の妥当性が、司法の場で確認されたと言える。
ただ、原発の運転差し止めを求める住民らの訴訟は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、同刈羽村)や四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)など全国各地に広がっている。Jパワーが青森県大間町で、建設中の大間原発を巡っても、対岸の北海道函館市が東京地裁に起こした建設差し止め請求訴訟が係争中だ。
西川一誠福井県知事は高浜3、4号機の再稼働に同意する条件として、原発の重要性に対する国民の理解促進など原子力政策を巡る諸問題への対応を急ぐように国に求めた。こうした取り組みに国が万全を期し、地元住民らの理解増進に努めることで、今回のような判例を着実に積み重ねていくことが、原子力利用の推進に不可欠の課題となる。
地裁は同時に大飯原発3、4号機(同県おおい町)の運転差し止め仮処分申し立ても却下した。高浜3、4号機については原告側による名古屋高裁への保全抗告申し立ても想定されるが、今回の決定により再稼働を禁じた法的拘束力は解ける。
関電は発電電力の原子力依存度が高く、福井県内に9基の原発を抱える。13年9月に大飯原発4号機が定期検査に入って以降、全基稼働を停止していた。原発の長期停止で燃料費の高い電源構成となり、4期連続の経常赤字につながっていた。
電力の供給力不足も関西地域の産業に広く不安を与えた。2度の電気料金上げも、製造業をはじめ企業経営を圧迫する大きな要因となり、地域産業の停滞も引き起こしていた。関電は原発再稼働後、来春にも電力料金引き下げを予定する。
関電は原決定の誤りを指摘し、安全性は確保できていると主張していた。また原決定では、国の新規制基準に対する不合理性にも言及していたため、司法の見解に注目が集まっていた。
4期連続赤字から経営安定なるか
関西電力は高浜原発3号機(福井県高浜町)について、2016年1月下旬にも原子炉を起動し、2月の発送電開始を目指す。原子力依存度の高い関西地域で電力供給不安の解消につながるほか、来春以降の料金引き下げも期待できる。4期連続で経常赤字が続く関電にとって経営安定化への貢献は大きく、価格競争力の回復も見込める。
関電は運転停止の法的拘束力が解けたことで、3号機の燃料装荷を25日に開始する。24日中には原子力規制委員会(NRA)の保安検査に着手した。並行して国際原子力機関(IAEA)の査察も受けて、約1カ月後の原子炉起動を予定している。
22日には福井県の西川一誠知事が再稼働同意を表明し、地元同意の手続きは完了。再稼働への壁は、司法判断のみとなっていた。
関電は当初、高浜原発3、4号機の11月再稼働を目指したが、想定よりも検査準備に時間を要した。このため燃料装荷前までに済ませる使用前検査3号検査を終えたのは17日。結果として仮処分の有無は、再稼働の時期にほぼ影響しなかった。
関電の原発運転は13年9月に大飯原発4号機(福井県おおい町)が停止して以来。供給力の不足に姫路第二発電所(兵庫県姫路市)の完成前倒しなどで電源確保を努めた。しかし夏冬の需要期は節電や他社融通に頼るなど供給は”綱渡り“。関西の産業活動にも電力不安が影を落とした。
3号機の稼働で月60億円の収支改善効果が見込まれる。3号機に約1カ月遅れて使用前検査が進む4号機や新規制基準の審査が大詰めの大飯原発3、4号機も運転すれば経営の安定化効果は絶大だ。
原発運転停止期間中の2度にわたる電力料金引き上げで大口顧客の離脱も進んだ。発電コストの安い安定電源の復帰により、料金引き下げの原資も確保できることから、新電力各社に対しても価格競争力の回復が望める。
新基準の合理性証明
関西電力高浜原子力発電所(福井県高浜町)3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定が覆ったことで、東日本大震災を踏まえて国が定めた新しい規制基準の合理性が認められたことになる。同基準に沿って原発再稼働の是非を判断する原子力規制委員会の審査手続きについても、妥当性が裏付けられた格好で、日本の原子力政策や原子力事業にとって大きな意義を持つ。
4月に運転差し止めの仮処分決定を下した同地裁の樋口英明裁判長(現在は名古屋家裁に異動)は、関電の安全対策に不備があるとしたほか、国の新規制基準についても合理性を欠くと指摘した。
このため、関電側の異議申し立てを受けた異議審では(1)原発の耐震設計で基準となる地震の大きさを表す「基準地震動」の妥当性(2)原子力施設内の設備の地震に対する安全性(3)使用済み核燃料プールの耐震性―に加えて新規制基準の合理性そのものが大きな争点となった。
原発に関する新規制基準では、これまであまり厳格に定めていなかった地震や津波などの大規模な自然災害への対策、さらには重大事故への対策に関する基準を明確に規定。関電はこの趣旨を踏まえて「さまざまな不確かさも考慮し、地盤の固さなど地域の特性を踏まえて」の基準地震動の算定など慎重な対応を主張してきた。
同社の主張が認められたことで、新規制基準の合理性と、この基準に基づいて一足先に運転を再開した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機を巡る安全対策の妥当性が、司法の場で確認されたと言える。
ただ、原発の運転差し止めを求める住民らの訴訟は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、同刈羽村)や四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)など全国各地に広がっている。Jパワーが青森県大間町で、建設中の大間原発を巡っても、対岸の北海道函館市が東京地裁に起こした建設差し止め請求訴訟が係争中だ。
西川一誠福井県知事は高浜3、4号機の再稼働に同意する条件として、原発の重要性に対する国民の理解促進など原子力政策を巡る諸問題への対応を急ぐように国に求めた。こうした取り組みに国が万全を期し、地元住民らの理解増進に努めることで、今回のような判例を着実に積み重ねていくことが、原子力利用の推進に不可欠の課題となる。
日刊工業新聞2015年12月25日1面