新幹線が止まらないのは残念だけど、19年開業へ動き出す宇都宮ライトレール

目抜き通り東西結ぶ。高齢化地方「市民の足」になるか

 宇都宮市と栃木県芳賀町が出資する第三セクターの次世代型路面電車(LRT)の運営会社「宇都宮ライトレール」が発足し、全国初の新設LRT事業が動きだした。2019年の開業を目指すLRTは少子高齢化を迎える地方都市の”市民の足“として期待される一方、事業の有効性を疑問視する声もある。起点となるJR宇都宮駅にLRTがどのように接続するかやトランジットセンター(交通結節点)の多機能化など、課題が残っている。

 北関東有数の乗降客数を誇るJR宇都宮駅。「駅ナカ」施設が充実し、土産を求めるビジネスマンがひっきりなしに往来する。東口につながる中2階のスロープを渡り終えるころ、広大な空き区画が見えてくる。このエリアのどこかにLRTの軌道が通る予定だ。

【8年で累損解消】

 LRTはJR宇都宮駅を起点に東西約18キロメートルに建設する。先行整備する東側15キロメートルはキヤノンやJTなどが立地する清原工業団地内を抜け、ホンダなどが拠点を置く芳賀・高根沢工業団地が終点となる。沿線には宇都宮大学や作新学院大学など学校も多く、通勤や通学が主な需要になる。西側は商業施設が林立する市の目抜き通りにレールを通し、足利銀行本店付近を終点とする計画だ。

総事業費は450億円規模。市は平日1日の利用者数を約1万6300人と予想し、開業前経費による累積損失7億6500万円は開業から8年で解消できると試算する。

【JRと結節課題】

 こうした中、目下最大の課題はどのような形でLRTがJR宇都宮駅に接続するかだ。軌道は南北に延びるJR線に東西に交差する形で敷設するが、JR宇都宮駅付近は地上を在来線が通り、新幹線の専用高架も走るため制約がある。

 市とJR東日本はJR宇都宮駅の両サイドに専用スロープを設け、新幹線高架下の中2階部分をLRTが通り抜ける案で最終調整している。ただ、中2階部分には新幹線や在来線の改札口、商業施設などが集中するため、中2階部分のどの区画にLRTの軌道を確保するのか、約2年間の交渉を経ても合意していないのが現状だ。

「コンパクトシティ」へ前進


 LRT事業は1993年に当時の渡辺文雄栃木県知事が新交通システムについて勉強を進めると発言し、導入機運が高まった。宇都宮市は少子高齢化を見据え、都市機能や人口を各地域の拠点に集約する「ネットワーク型コンパクトシティ」を推進、LRTをこの構想の基幹システムに位置づけている。慢性的な渋滞緩和やランドマークの創造など経済界からの期待も強い。

【バスVS新交通】

 ただ、市民には事業の有効性を疑問視する動きや巨額投資に対する懸念の声も根強くあり、20年にわたり市政の争点に残り続けてきた経緯がある。「宇都宮市のLRTに反対し公共交通を考える会」の上田憲一代表は「高齢化を迎える宇都宮市にあって公共交通への投資は必要」と一定の理解を示すが、「LRTは新たな交通渋滞を引き起こす可能性がある。小回りのきくバス輸送を手厚くするほうが財政負担が少なく効率的」と主張する。

 市の想定では事業費約400億円のうち50%(200億円)は国の支援を受け、残りの200億円を市が負担するとしている。市負担の90%を市債でまかない、一般財源支出額は約13億円程度に抑える。市の一般会計予算は約1900億円。市LRT整備室は「市の予算規模を考えても対応可能だ」と説明する。

【市民交流の場に】

 計画では先行整備の東側区間に5カ所のトランジットセンター(交通結節点)を設け、バスや自動車などからの乗り換えを促すとしている。これらのトランジットセンターに商業施設や街づくり施設を併設し、多機能化を図る案も検討中だ。トランジットセンターを市民の交流の場にし、にぎわいを持たせたいとするが、近隣施設との相乗効果を発揮させる綿密なグランドデザインが求められる。

 郊外のトランジットセンターの多機能化に関し、交通コンサルタント会社ライトレール(東京都豊島区)の阿部等社長は「既存の大型商業施設との連携が効果的だ」と指摘。利用者を増やすには「運行頻度を高め、ユーザーの移動時間を短縮することが不可欠」(阿部氏)になるという。事業を進める上では街づくりの視点とともに、さらなる利便性の向上が不可欠といえそうだ。
(文=栃木・小野里裕一)

日刊工業新聞2015年11月25日/26日地域経済

明 豊

明 豊
12月21日
この記事のファシリテーター

LRT、コンパクトシティといえば富山市が有名。海外でLRTと街が非常に調和していると感じたのはスペインのビルバオ。ビルバオの人口は40万人で宇都宮市の50万人と少ないが、もともと「美食の街」だったところに、グッゲンハイム美術館の誘致し工業都市から観光都市としてよみがえった。宇都宮に限らず地方都市でLRTに合わせソフトの充実も期待。北海道新幹線はひとまず通過になったけど。

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林 卓也
林 卓也
07月05日
LRTより小山駅ー鬼怒川間の高架化が必要です。
  

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