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ノーベル賞「地方大出身」受賞続く。今後の国立大改革につなげられるか

昨年の中村、今年の大村・梶田の3氏。「性別や出身、学歴、職歴などの多様性は創造力の源泉」
 2015年ノーベル賞受賞が決まった大村智北里大学特別栄誉教授と、梶田隆章東京大学宇宙線研究所長はそれぞれ山梨大学、埼玉大学という地方中堅大学の卒業だ。大村氏は社会人での修士号ながら論文博士を二つ持ち、梶田氏は修士進学段階で旧帝大に移り、学歴は各時代の国の施策を反映している。地方大学で基礎を身につけた人材の流動化と多様性は、日本の創造性発揮のためにますます、重要になると見られている。

 今回の2氏、それに14年の受賞者で徳島大学出身の中村修二米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授は、いずれも学部時代を出身に近い地方国立大学で過ごしている。今夏、文部科学省が求めた国立大の「世界」「特色」「地域」の重点支援枠で、地方創生に貢献する「地域」を選んだ大学だ。

 埼玉大の山口宏樹学長は、梶田氏の受賞について「大学の基本的な使命は知の継承、知の創造だということが示せた」と述べた。3氏の事例は、”地域から全国、世界へ“と広がる人材や研究の源に、地方大学があることを示したともいえる。

 日本の研究者育成はかつて、旧帝大など研究型大学に限定されていた。進学率が低い時代のエリート教育で、大学院は中堅大学になかったり定員が少なかった。その中で大村氏は高校教員からキャリアをチェンジした。東京理科大学で、数年かけて修士を修了、研究者の土台を固めた。

 一方、梶田氏は埼玉大の学部から東大大学院修士・博士課程を修了した。研究型大学の大学院定員が増え、他大学出身者の進学が増えてきたころだ。中村氏は徳島大で学部・修士を終え企業に就職。博士号は徳島大の論文博士で取得した。

 科学技術振興機構(JST)の相澤益男顧問は「性別や出身、学歴、職歴などの多様性は創造力の源泉だ。研究型でない大学も、その後の発展の土台となる基礎教育は絶対に負けない―という意識を持ってほしい」と強調する。大学改革による人材輩出を社会は求めている。
日刊工業新聞2015年10月12日 1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
3氏の学部卒業が地方大学だったというのはたまたまかもしれないが、世代も違う中で必然性があるように思える。地方大学は大いに刺激になっただろう。 先日公開した大学改革の記事もあわせて読んでもらえれば。

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