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退任が決まったGEのイメルトCEOが株主に宛てた手紙

日米のコーポレートガバナンスの違いを浮き彫りに
退任が決まったGEのイメルトCEOが株主に宛てた手紙

イメルトCEO


リーダーシップは将来性ある人々を惹きつける


 リーダーシップとは、これまで以上に、将来性ある人々を新たに惹きつけていくことなのです。GEは単一企業として、差別をせず、未来を恐れない成果主義の集団として活動していきます。

 GEで働くアメリカ人たちは、ブラジルや中国の取引先の方々に好意的です。優れたグローバル企業というのは多様性に富んだチームで、困難な時にはお互いに助け合う仲間なのです。

 私たちはグローバリゼーションの終焉に立ち会っているのでしょうか?私はそうは思いません。金融センターから、あるいはウェブサイトからしか世界を見ていない「グローバルエリート」が終わるだけです。

「グローバル機関」は近代化が必須


 たいていの「グローバル機関」は設立から70年が経っており、現代のグローバルな課題に対応するためには近代化が必須なのです。グローバリゼーションとは「地道なこと」であり、地場に根付いて小売りのレベルで消費されることが重要です。

 グローバリゼーションとは極めてローカルなことなのです。世界のどこにおいても投資と雇用は重要な意義をもちます。そして、グローバリゼーションは「新鮮な」ことであり、日々変化するものなのです。

 はっきり申し上げます。GEは多国間の相互自由貿易と自由貿易を選好します。ナショナリズムに向かうこの時期であっても、GEの競争上の優位性は向上するでしょう。GEは貿易協定を必要としてはいません。

 私たちには優れたグローバル拠点があり、GEに資金調達へのアクセスを提供する国々からは、輸出することができるのです。GEは起こりうる税制政策の変更や保護貿易への傾向にも対応します。

 GEは我々のグローバルチームを尊重します。グローバリゼーションをあきらめた企業を多く見聞きしますが、それはGEにとってチャンスが広がっていることを意味するのです。

米国人は「認める」ことを重んじる


 アメリカ人のビジネスマン、ビジネスウーマンは自らが所属する組織のグローバルチームとチームメンバーの母国に敬意を払うことはできるでしょうか?

 私はもちろんできると思います。アメリカ人は「認める」ことを重んじるからです。公平さ、真の価値、ベストを尽くし競い合うこと、リスクを取る姿勢、努力すること、還元すること、研鑽すること、誠実さ。こうしたものが、アメリカ企業であるGEを世界中で成功するに導いた概念であり、価値観なのです。

 私はこうした概念と共に育ちましたし、この価値観なくしてGEの世界中の従業員に接することになれば、決して優れたアメリカ人CEOになどなれません。

 ですが、現実を直視してみましょう。米国の勤労者の多くが抱いている懸念の多くは競争力の不足が原因です。機能を果たしていない政府を責めるだけではいけません。

 税制改革は一つの手段かもしれませんが、唯一の解決策ではないでしょう。米国企業は投資を増やす必要があるのです。ここ数年にわたり、設備投資は大幅に減少しています。

 ただ単に安い賃金を求めるだけのアウトソーシングは安易すぎるのです。このところ見られる大規模な産業界の統合も、イノベーションを絶やし、競争力ある人材への投資を減らしてしまったことから、米国の競争力向上には繋がりませんでした。

デジタル化が生産性の課題を解決


 GEは、産業界のデジタル化への投資が生産性という課題を解決する手段になると考えています。生産性向上に寄与すると見込む2つの新しい技術が、インダストリアル・インターネットと積層造形(3Dプリンティング)です。

 GEはこの両分野における主導をとります。なぜでしょうか?それは、身を引いて他企業に市場創出を委ね、リーダーの立場を降りてGEの果たす役割を消費者へと移すことは、いつでもできるからです。

 GEはこの革新的な両分野での最高の知的財産と最良の能力を保有しています。GEは巨大な実践者であり、私たちの顧客企業は生産性を渇望しています。

 インダストリアル・インターネットと積層造形(3Dプリンティング)を勝ち取ることによってGEは最上のものを得ますが、それらを他社に渡してしまえば最大のものを失うことになります。いまGEは、自社や顧客企業、ひいては世界の生産性を生み出すような、新しい事業を作り上げているのです。

ジェットエンジンにみるGEの未来


 デジタル化とグローバリゼーションが交わることで、GEは、よりスキルが高く給与水準も見合った人材を惹きつけることのできる、より競争力の高い企業となります。

 私たちは最近、インディアナ州に航空機用の新たなジェットエンジン工場を設立しました。この工場ではLEAPエンジン(※)を製造しています。

 このエンジンには141ものセンサーが搭載されており、用いる部品の中には3Dプリント技術を使用して設計・製造されたものや、次世代のセラミックマトリックス複合材料(CMC)で作られたものもあります。

 LEAP(※)はこれまでにない、最先端の耐久性のあるデジタル対応エンジンとして設計されており、その80%は米国外へ輸出される予定です。

 また、GEのサービスエンジニアは毎日、デジタルツールを携えて世界中のお客様にサービスを提供しています。イノベーションは、仕事や作業者をいっそうスマートにしてくれるのです。
GE Reports Japan2017年3月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 不祥事でもトカゲのしっぽ切りをする日本企業のトップもいる中で、このタイミングでの退任発表は改めて日米のコーポレートガバナンスの違いを浮き彫りにさせた。 イメルト氏は株価にはなかなか見えにくい企業価値を生んだ。それは社内カルチャーの変革。「GE ValueからGE Beliefs」へ 具体的には(1)お客様に選ばれる存在であり続ける(2)より速く、だからシンプルに(3)試すことで学び、勝利につなげる(4)信頼して任せ、互いに高め合う(5)どんな環境でも、勝ちにこだわる  日本の経営者からみればまだまだ若く経く経験も豊富。社外取締役でも呼んできて欲しい。ズバリ日立とか(コンフリクトあって難しいだろうけど)。

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