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次のモービルアイ、ウェイズを探せ! イスラエルの自動運転関連スタートアップ

運転者監視にサイバー攻撃防御、軍事用のレーダー3Dマッピング技術など
次のモービルアイ、ウェイズを探せ! イスラエルの自動運転関連スタートアップ

指によるジェスチャーで画面操作が行えるアイサイトのデモ。画像から性別や年齢も推定できる(オートモーティブワールドで)


欧米自動車メーカー、現地拠点の整備急ぐ


 IQPは、アプリケーションを迅速に開発するためのアジャイル開発手法を提案。プログラム言語を使わずに、パーツや機器などの画像をドラッグ&ドロップしてプログラムを素早く組める。

 それまで6カ月かかっていた開発作業が2週間で完了した顧客の事例もあるといいます。当初はIoT(モノのインターネット)向けを想定していましたが、昨年から自動車向けにも展開し始め、トヨタ自動車に採用されたとのことです。

 そのほか、センサー関係で、軍事用のレーダー技術を自動車に応用したのがアーブ・ロボティクス。小型・軽量・省電力・低コストのレーダーを使い、完全自動運転にも対応するというリアルタイム3Dマッピング技術を開発。

 光レーザーをスキャンしながらマッピングを行うライダー(光検出・測距)と異なり、全天候型なのが特徴。300メートル先まで測定でき、解像度は10センチメートルという。

 さらに、バイヤーは7ギガ〜10ギガヘルツ帯のウルトラワイドバンドの電波を照射し、その反射波を独自のアルゴリズムで解析、壁の向こう側にいる人の状態などが捕捉できる技術が売り物。

 日本では技術基準適合証明(技適)がまだ取れていませんが、車向けでは座席に座っているのが大人か子供かを検知したり、車外の障害物検知などに役立てられるとしています。

 このように、自動車関連でもさまざまなハイテクスタートアップを抱えるイスラエル。「完成車メーカーは存在しないが、日本やフランス、ドイツなどから車関連の視察が相次いでいる」。

 イスラエル輸出協会自動車部長のサギーブ・エラドさんは自慢げに言います。実際、イスラエルと日本企業のビジネスを支援するイスラテック(東京都港区)の加藤清司社長によれば、「欧米の自動車メーカーもイスラエルで現地拠点の整備を急いでいる」ということです。

 その加藤さんがこのほど上梓した『スタートアップ大国イスラエルの秘密』(洋泉社)という本では、ナイトビジョン機器を開発するブライトウェイ・ビジョンや、ライダー関連のイノビズ・テクノロジーズ、人工知能による運転支援システムのネクサーといった自動運転関連の有望スタートアップの名前が紹介されています。

 さらに、本の中で加藤さんは、「イスラエルは自動運転関連技術に必要とされる画像認識、アルゴリズム、セキュリティー、通信などで得意とする領域を多く持つ。そのため、今後もこの領域では、イスラエルから多数のスタートアップが出てくるだろう」と指摘しています。
2017年1月23日付日刊工業新聞電子版
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
NYタイムズのベストセラーリストに載り、2012年に邦訳の出た『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』(ダイヤモンド社)という本では、冒頭にイスラエルのスタートアップの代表格としてベタープレイスが出てきます。電気自動車の電池を交換できるようにして航続距離を延ばすというアイデアのビジネスで、日産とも提携し、日本でもかなり注目されました。小生も以前、シャイ・アガシCEOをインタビューした憶えがありますが、事業としては見事に失敗しました。あくまでビジネスなので、中にはこうした例があるのもやむを得ませんが、残念です。

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