ニュースイッチ

黒子に徹していた電子部品各社、IoTの主役へ。やらない理由がないほど環境整う

センサーとモジュール化で技術的なハードル下がる。他社に売るよりまず自社で
黒子に徹していた電子部品各社、IoTの主役へ。やらない理由がないほど環境整う

アルプス電気のIoTスマートモジュール。拡張性が高く、簡単にカスタマイズできる

 IoT(モノのインターネット)の普及には、電子部品メーカー各社の役割が大きい。スマートフォンや自動車向けの製品とは異なり、IoTは複数のセンサーや通信モジュールを組み合わせて構築することから、電子部品各社がソリューションに深く関わる。従来まで黒子に徹していた各社だが、IoTにおいては主役になるべく、新技術や新ソリューションの創出を急ぐ構えだ。

京セラ、ネットワーク参入


黒瀬KCCS社長㊧とシグフォックスアジアパシフィック社長のロズウェル・ウォルフ氏

 「本格的なIoTの普及に向けて貢献したい」―。2月からIoT用の低価格通信網を運営する京セラコミュニケーションシステム(KCCS、京都市伏見区)の黒瀬善仁社長は、語気を強めた。親会社の京セラは電子部品大手の一角としてIoTビジネスを推進している。この一環としてKCCSは仏ベンチャーのシグフォックスと組み、通信網サービスでIoT市場を開拓する。

 KDDIなど約40社がIoTサービスやセンサー、通信機器を開発するパートナーとして参加。世界統一規格の通信網に対応しているのが特徴で、KCCSは各政令都市で120局の基地局を設置する計画だ。世界市場で年間売上高100億円を目指す。

 アルプス電気は汎用性の高い「IoTスマートモジュール」を販売している。気圧センサーなど各種センサーとブルートゥースを組み合わせており、IoTの基本的な利用環境を簡易に整備できる。また拡張コネクターを搭載しており、センサーの追加など顧客の要望によって簡単にカスタマイズできる。

 農業や鉄道会社、メガネメーカーなどにIoTソリューションとして展開。農業分野では水田管理の省力化に使えるほか、地震などによる工場への被害状況を遠隔地から把握することに使える。

 TDKはIoT向けでは、センサー以外にリチウムイオン電池の活用策を模索している。一般的なIoTのデバイスやモジュールは、センサーや通信用プロセッサーなどが搭載されている。

 これらは社会インフラ分野での利用が想定されているが、高圧線や橋脚など点検が頻繁にできない場所では持続性の高い電源が求められる。TDKはエネルギーハーベストなどの発電技術や非接触給電などの蓄電技術を応用したユニット化でIoT市場に挑む。

<次のページ、あの村田製作所クラウドファンディング

日刊工業新聞2017年1月4日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 新しい通信サービス、センサーと通信一体型のモジュール、ベンチャーによるものづくりの支援体制、そして自社工場のIoT化。技術的な選択肢のみならず実行環境や支援体制なども視野に入れると既によりどりみどりのラインナップだ。これまでの新しい技術コンセプトやビジネスモデルはなんらかの技術的なハードルがあったが、IoTの場合には既にこの数年確立されてきたクラウドと、スマホによって培われたセンサー技術およびそのモジュール化が存在し、あとはアイデアと組合せでビジネスモデルを作る環境は整っている。そこがこれまでと大きく異なる。他社にいきなり持っていけなければ自社でやるのも、極めて真っ当なオーソドックスなやり方だ。ここまでくると取り組まない企業の方が理由を聞きたくなる。かつての日本がそうだったように新しいことに貪欲に取り組み柔軟に変化できる企業のみが生き残っていく。もはややらない理由はない。

編集部のおすすめ