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空飛ぶ配送センターから注文品を短時間でお届け、アマゾンが特許取得

宅配ピザより早く、ドローン配送の究極モデルになるか?
空飛ぶ配送センターから注文品を短時間でお届け、アマゾンが特許取得

空飛ぶ配送センターについての特許の模式図(USPTO)

 気球のように空に浮かぶ大型配送センターから、ネットで注文された品物をドローンに載せて指定場所まで届けるー。米アマゾンがこうした大胆なアイデアについて、米国特許商標庁(USPTO)から特許を取得していたことが28日明らかになった。スタートアップやイノベーション関連の調査会社である米CBインサイツのアナリストが報じた。

 アマゾンはすでにドローンを使った空輸での配送サービス試験を一部で始めており、2017年にも実用に移す計画でいる。今回の特許は、そのさらに先を見越した将来構想と言えるが、現時点では米連邦航空局(FAA)の航空規制に明らかに違反していることから、当面の実用化は難しいと見られている。

 アマゾンが今年4月に取得した特許によれば、高度およそ4万5000フィート(約14キロメートル)の空に飛行船のような空飛ぶ配送センターを浮かべ、その内部にさまざまな商品や配送用ドローンを搭載しておく。地上の配送センターからではあるが、12月初めにアマゾンが英国で試験的に開始した「アマゾン・プライムエア」のドローン配送では、注文を受けてからわずか13分で顧客のもとに商品を配送できた例もあるという。ただし、配送時間は気候などに左右されるほか、配送地点には広めのスペースと、品物を落とす目印となるコード付きのランディングパッドが必要となる。

 空に浮かぶ配送センターであれば、地上からに比べ配送時間をさらに短くできる可能性がある。例えば、ドローンに温度管理機能を持たせながら、短時間配送の利点を生かして宅配ピザより早く、腐りやすい食べ物を冷蔵したまま、温かい料理を温かいまま顧客のもとに届けることも不可能ではなくなる。この配送センター自体は、気候や大規模なイベント、需要動向の変化に応じて飛んでいる場所を移動できるという。

 ちなみに、地上から再び配送センターが浮かんでいる高度までドローンが戻るとかなりのエネルギーを消費することから、ドローンは配送センターから目的地までの片道飛行とする。配送後は地上の特定の場所に飛んでいき、商品の補充品や飛行用の燃料と一緒に小型飛行船のようなシャトル便に載せられて、まとめて配送センターに戻される。さらには、地上と配送センター間の作業者の移動にシャトル便を使うことも想定しているようだ。

【「アマゾン・プライムエア」での初のドローン配送試験の動画】
2016年12月30日付日刊工業新聞電子版掲載
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
留意点はアマゾンが特許を取ったとしても、必ずしもそれを実行に移すとは限らないこと。それと、アマゾンだけでなく目端の利くスタートアップに共通なのは、日本人がよく考える「規制があるから無理」という理屈が意味をなさないこと。ドローン配送自体が実用化に向けてそうやって前進してきているし、ウーバーもエアビーアンドビーも規制に挑み、既成概念や既得権をぶち壊しながらビジネスを世界に広げている。

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