新国立競技場はどう作られる?今日、起工式
世界が注目する大型プロジェクト、施工ポイントをチェック
施工段階で“手戻り”防ぐ
一方、施工コストを計画内にどのように抑えるかは重要なポイントだ。総工費の高騰が当初計画案の白紙撤回につながっただけに周囲の目も厳しくなる。工事費は見積もり提出時点の実勢価格を反映させている。
今後、東京五輪関連の工事や都市部の再開発工事が本格化するだけに、労務費や資材費の上昇が予想される。池田理事兼新国立競技場設置本部長は「相当努力していただく」と大成JVに注文をつける。
大成JVは新国立競技場の設計段階から施工技術を検討。コストを抑制し、効率化できる施工上の工夫を設計にフィードバックしてきた。
工期遅れやコストアップになる設計変更を少なくするため、設計段階でワークショップなどを開き、各種競技団体の意見を設計に取り入れた。施工段階で可能な限り“手戻り”を防いでいく考えだ。
労務費や資材費の上昇分をどの程度織り込んだか明かしていないが、相応のコスト削減努力が必要になる。
制振構造を初採用
今回初めて新国立競技場で採用する構造として、地震対策用の「ソフトファーストストーリー制振構造」がある。地盤に近いスタジアムの下階層を比較的柔らかいフレームとし、オイルダンパーを集中的に設置。小さい地震から大地震まで地震エネルギーを効率良く吸収する。
免震構造と比べてコストを抑えられ、工期も短縮できる。一方、上層階は斜めに取り付ける梁(はり)とブレースにより剛性を確保する。
計画段階では紆余(うよ)曲折があった新国立競技場だが、工事が始まった以上、工期までに無事完成させることが重要だ。
池田理事兼新国立競技場設置本部長は「大成JVとタッグを組んでより良いスタジアムにするよう取り組む。いろいろな人から関心を持ってもらい、愛されるものになってほしい」と五輪後も見すえ、立派な建築物を世に送り出すことを期待する。
大成建設・村田誉之社長「確実な作業、繰り返す」
大成建設の村田誉之社長はインタビューに応じ、新国立競技場の施工について「一つひとつの作業を確実にやることを繰り返す」と意気込みを語った。
―いよいよ新国立競技場の工事が本格化します。
「ぜひとも工事を手がけたいと思ってきた案件だ。コストや工程、品質などいい仕事ができることを示したい。リーダーには役員がつき、特別チームを組んで通常にはない体制で取り組んでいる。東京五輪・パラリンピックに海外のお客さまが来た時に、日本のスタジアムは素晴らしいと評価していただけるものにしたい」
―工期厳守やコスト抑制など難しい課題があります。
「調達先も含め一緒に仕事をやりたいと、多くの会社から声をかけていただいた。みなさんに協力してもらいオールジャパンでやっていく。設計施工の工事なので、早い段階から現場に手間がかからないように工夫している。屋根とスタンドの施工が(旧計画と比べて)1社になり工程管理がしやすい」
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2016年12月9日