米国の工作機械IoT規格、巨大ユーザーが標準化をけん引

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右からAMTのウッズ専務理事、1人置いてシンバラ副専務理事
 22日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開催中の日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)。今回は、あらゆるモノがインターネットでつながるIoT(モノのインターネット)技術を使い、「効率的かつ設備の遠隔監視・予防保全などに役立つ次世代工場を実現」といった出展が特に目立っています。

 確かに、個別の加工機械による効率化だけでは限界も出てくるでしょう。そのため、自社機だけでなく、他社の機械や関連機器も含めてネットワークでつなげ、情報をやりとりすることで、工場全体としての効率化や問題点を素早く分析・把握できるようにする「スマートファクトリー」に焦点が移ってきているようです。

 そうした中、米国製造技術工業協会(AMT)が、自ら設立したMTコネクト・インスティテュートで標準化を手がける製造業向けオープン通信規格についてのセミナーを、JIMTOF会場で20日に開催しました。参加者は国内の工作機械メーカー中心に約90人。関係者の間での関心はそれなりに高いようです。

 この「MTコネクト」規格は2006年に標準化作業が開始。インターネット関連技術であるXMLやHTTPを採用し、機械と機械、アプリケーションとの間でのシームレスなデータ共有を実現しています。対応機器であれば、メーカーを問わずに接続でき、接続機器のデータをリアルタイムに収集、稼働状況の可視化や分析が可能になるそうです。

 さらに、マシニングセンター(MC)、NC旋盤といった代表的な工作機械だけでなく、ツールセッター、放電加工機、研削盤、レーザー、ウオータージェット、3次元測定器、積層造形(AM)など、対応を予定している機種も幅広い。

 「さまざまなワーキンググループを通じて業界全体で標準化を進めている。規格自体、完成されたものではなく、カバーされないものがあれば、団体として標準化に取り組んでいく」。祖父が広島出身というAMTのティム・シンバラ技術担当副専務理事は、製造現場全体をカバーする通信規格である点をこう強調しました。

 使用料も実施料も、MTコネクト・インスティテュートへのメンバー参加も無料としているほか、世界を代表する大手企業の存在も関心を引く理由になっています。ボーイング、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラルモーターズ(GM)などが標準化にかかわり、率先してMTコネクトの導入に踏み切っているためです。工作機械メーカーとしてはこうした大ユーザーの動向を無視するわけにはいきませんし、これらの事例を先行モデルとして見習う製造業も増えてくることでしょう。

 加えて、日本企業の間でも、ヤマザキマザックを筆頭にオークマ、牧野フライス製作所、ファナックなど、グローバルに展開する工作機械関連企業がMTコネクトに関与しています。こうしたことから、横並び色の強い日本メーカーの間では、「とりあえずこの規格を押さえておかなくては」という意識が、たぶん働いているのではないでしょうか。

 ただ、ウッズ専務理事によれば、メンバーがほとんどいない中国から同規格がダウンロードされるケースがある一方で、「欧州の動きは比較的遅い」といいます。MTコネクト・インスティテュートのウェブサイトを見ると、大学・企業・政府機関・団体合わせて現在261の機関がメンバーに名を連ね、ドイツのシーメンスやボッシュも会員として入ってはいるとはいえ、やはり欧州には米国発の規格に対する警戒感があるのかもしれません。
(文=藤元正)

日刊工業新聞電子版2016年11月21日

COMMENT

藤元正
モノづくり日本会議実行委員会
委員長

ウッズ専務理事はMTコネクトについて、「USBやブルートゥースのように、製造技術分野での標準接続方式として世界に広げたい」と期待を表明しています。GEが「インダストリアル・インターネット」でモノづくりIoTを牽引するように、とりわけソフトウエアの領域になると、米国はその強みを遺憾なく発揮します。それに加えて、GEも含めた工作機械の大ユーザーの存在がレバレッジとなり、設備機械や工場のオープン化、標準化の流れがいっそう加速していくことでしょう。

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