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「トランプ大統領でも第4次産業革命の流れは止められない」(伊藤元重教授)

「トランプ大統領でも第4次産業革命の流れは止められない」(伊藤元重教授)

トランプ公式サイトより

 円安批判や環太平洋連携協定(TPP)の離脱を主張してきたドナルド・トランプ氏が次期米国大統領に就任する。世界的に保護主義が台頭しつつあり、グローバル化で経済発展してきた日本の行き先に暗い影を落としている。伊藤元重学習院大学教授に、日本経済への影響や世界の流れについて聞いた。


 ―トランプ氏の一連の発言が実現すれば、経済でも政治でも各国間の亀裂が深まります。
 「大統領候補の発言は過激になりやすい。かつてレーガン大統領は選挙期間中に中国と国交断交すると発言したが、実際はそうはならなかった。TPP発効は難しい局面だが、TPPと似たような協定が形を変えて将来実現する可能性もある」

 ―米国の対日政策が日米の経済交流を停滞させるリスクは。
 「日米貿易摩擦があった1980―90年代のように、貿易問題を(対米輸出規制などを促す)政治的な発言や行動に結びつける可能性はある。だが、当時も日米間貿易は減るどころか増えていった。政治と経済は直結しない。日本経済界は過度に反応しなくてよい」

 ―保護主義にどう対応すべきでしょうか。
 「移民や新技術による社会・産業の構造変化のスピードをもう少しゆるやかにしてほしいという考えが政治に圧力をかけ、保護主義に傾けている。ただ、いつの時代もそういう考えはある。トランプ政権が変化に苦しむ層に配慮しながら、自由経済を支持する共和党議会と共に政策運営できるかがカギを握る」

 ―第4次産業革命で産業構造の変化が加速します。社会が不安定化する懸念は。
 「政治動向とは関係なく、シアトルのガレージで起業した青年によって世界中がパソコンでつながったような革新は起こる。第4次産業革命の流れは止められない。ただ、安定した地域コミュニティーの存在が前提だ。過度に人やグローバルマネーが国境を越えて移動するのには歯止めをかけるべきかもしれない」
(聞き手=平岡乾)
日刊工業新聞2016年11月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
トランプはビジネスマン。基本的にはシリコンバレーを含めアンチビジネスにそれほど心配する必要はないだろう。問題は米国に利する政策により、いわゆる「インダストリアルインターネット」の世界観で日本の製造業にとっては、逆風になる可能性は大いにある。

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