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米ナスダックがビットコイン技術を使った実験プロジェクト

非上場企業の株取引に適用、取引を高速・効率化
米ナスダックがビットコイン技術を使った実験プロジェクト

ビットコイン(ブルームバーグ)

 新興企業市場のナスダックを運営する米ナスダックOMXグループは、仮想通貨ビットコインの関連技術についての実験プロジェクトを今年後半に始めると発表した。仮想通貨のやり取りをすべて記録する「ブロックチェーン」という技術をもとに、非上場企業の株式を売買する「ナスダック・プライベート・マーケット」の取引に適用する。

 非上場株では弁護士がいちいち手作業で取引を確認しながら管理するようなケースもあるといい、手続きを完全電子化することによって安全かつ効率的な取引ができるようになるか実験プロジェクトで見極める。将来はプライベート・マーケットのシステムをブロックチェーンを使った仕組みに置き換えたい意向のようだ。

 ブロックチェーンはビットコインなど仮想通貨の根幹をなす技術で、プログラムから「採掘(マイニング)」されて世間で流通しているビットコインについてのやり取りをすべて記録した「取引履歴」。取引によって所有者が変わるたびにデータが書き換えられ、履歴がブロックチェーンに記録されることで、誰から誰に所有権が移ったか遡って確認できるため、それがビットコインの信用を担保している。

 ブロックチェーンを導入すれば、コンピューターネットワーク上で、銀行やブローカーなどを通さずに直取引ができ、デフォールト(不履行)や第三者の改ざんといったリスクなしに、所有権をほぼリアルタイムに移すことができる利点が期待できるという。

 ナスダックはこうした特徴を持つブロックチェーンに注目し、フレドリック・ボス副社長がナスダックでのブロックチェーン技術の戦略開発を主導するエバンジェリストに就任。ボブ・グレイフィールドCEOも「顧客だけではなく、グローバルでの幅広い資本市場に恩恵をもたらす」としている。

 取引の効率性や高速性から、ブロックチェーンやビットコインには金融機関も注目しており、スイスのUBSがブロックチェーン技術の使い道を探る研究部門を今年4月に設立。米国初の金融規制当局公認のビットコイン取引所を1月に開業した米コインベース(カリフォルニア州)では、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社が出資者に名を連ねる。ゴールドマン・サックスも、ビットコインについて消費者向けサービスを行う米サークル・インターネット・フィナンシャル(マサチューセッツ州)に出資するなど動きが活発になっている。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
ビットコインをめぐっては、日本の取引所で顧客が預けていたビットコインが消え、取引所が破綻するという事件があったのは記憶に新しい。その時よりもセキュリティーは強化されているのだろうが、ネットワークの乗っ取りなどを含めリスクがないわけではない。まあ、現在の取引でもトラブルやリスクがないわけではないが、果たして通貨革命が金融革命につながるのかどうか。

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