来週発表のノーベル賞、注目の「ゲノム編集」は受賞なるか

トムソン・ロイターは候補を4人に、特許紛争さらに混迷深まる

 今年もノーベル賞発表の季節が近づいてきました。10月3日の生理学医学賞でノーベル賞ウィークの幕が開き、自然科学分野では4日に物理学賞、5日に化学賞が発表されます(平和賞は7日、経済学賞10日、文学賞の発表日程は近く公表)。

 3年連続で日本人の受賞なるかという点も気になりますが、調査会社の米トムソン・ロイターは21日、新たに3人の日本の研究者をノーベル賞候補に加えると発表しました。うち、生理学医学賞で注目分野の「免疫学」では、京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)名誉教授の名前が挙がっています。

 同名誉教授の数ある業績の中でとくに高く評価されているのは、免疫T細胞の表面にあるPD−1という分子を発見し、それが特定の分子PD−L1と結びつくことでT細胞の活性が抑制されるのを突き止めたこと。さらに、抗PD−1抗体や抗PD−L1抗体で結合を邪魔すると、マウスの体の中でがんを攻撃する活性が高まり、がんの有効な免疫治療となる可能性を世界で初めて示しました。

 こうした研究成果をもとにヒト型の抗PD−1抗体ニボルマブ(一般名)による臨床試験が始まり、悪性黒色腫、肺がんなどの治療に使われる大型新薬「オプジーボ」(商品名)につながりました。本庶名誉教授は今年に入り、ノーベル賞の登竜門とも言える京都賞や慶応医学賞を相次ぎ受賞し、ノーベル賞受賞の期待が高まっています。

 一方、先のトムソン・ロイターの予測で2015年の化学賞の一押しテーマはゲノム編集でした。ゲノム(全遺伝情報)の遺伝子配列について、これまでより正確かつ簡単に安く操作できるCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)と言われる最先端技術です。この手法を開発した米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)のジェニファー・ダウドナ教授と、フランス人で現在、独マックス・プランク感染生物学研究所所長やスウェーデンのウメオ大学客員教授を務めるエマニュエル・シャルパンティエ博士の2人が候補に挙げられました。

 難病の治療法の研究や実験用動物の作製、さらには農産品の改良に役立つ技術としてCRISPR-Cas9は脚光を浴び、日本を含め世界中で応用研究が急ピッチで進められています。10年に一度と言われるほどインパクトのある研究成果であり、個人的にも生理学医学賞あるいは化学賞で今年もっとも受賞しそうなテーマだと見ています。

 ところが、トムソン・ロイターはゲノム編集について2016年のノーベル賞予想でも新たに2人を受賞候補に加えました。合成生物学や遺伝子工学の権威である米ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授と、中国生まれの米国人で、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学とが共同運営するブロード研究所のフェン・チャン博士です。

 実はこれが微妙なところで、CRISPR-Cas9の先陣争いや特許紛争が絡んでいるためです。細菌が自分の細胞内に入り込んできたウイルスを攻撃する仕組みを基本原理とするCRISPR-Cas9を使ってDNA上の配列で選んだ場所を切断し、遺伝子組み換えを行ったと最初に報告したのはダウドナとシャルパンティエ両博士のチーム。2012年8月に米サイエンス誌に論文を発表しています。

 ただ、ゲノム編集についての米国内での基盤となる特許が認められたのは、チャン博士のブロード研究所でした。これにダウドナ教授の所属するUCバークレーが異議を唱え、同校とブロード研究所との間で現在、激しい特許紛争が繰り広げられています。
《続きは日刊工業新聞電子版でご覧になれます》

日刊工業新聞電子版2016年9月26日付電子版掲載
「トムソン・ロイター引用栄誉賞」(ノーベル賞予測)2016年、日本からの受賞者は3名

藤元 正

藤元 正
09月27日
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受賞するとしたらダウドナ、シャルパンティエの2人、あるいはそれにチャンを加えた3人でしょうか。

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