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配車サービスと自動運転で、企業の合従連衡ヒートアップ

エンジニアの退社相次ぐグーグル、リフトは90億ドルでの身売りに失敗
配車サービスと自動運転で、企業の合従連衡ヒートアップ

自動運転仕様のボルボ「XC90」

**ウーバー、スタートアップ買収しボルボと提携
 自動運転車を使った配車サービスやライドシェア(相乗り)をめぐる提携・買収の動きが慌ただしくなってきた。米ウーバー(Uber)が、今年初めサンフランシスコに設立されたばかりのスタートアップで、大型トラック用自動運転装置を開発する米オットー(Otto)を買収すると18日に発表。ウーバーは同時にスウェーデンのボルボ・カーとも技術面で提携することを明らかにした。一方、ウーバーのライバルであり、ゼネラルモーターズ(GM)が一部出資する米リフト(Lyft)は90億ドルでの会社売却をIT大手各社に持ちかけたものの、失敗に終わったとハイテクニュースサイトのRecodeが19日報道した。

 実は、ウーバーが発表する前々日の16日には、米フォード・モーターがハンドルやブレーキペダルを装備しない完全自動運転車を2021年までに実用化し、配車サービスやライドシェア事業者向けに販売すると明らかにしたばかり。一方で、ウーバーとボルボの提携は非独占契約とされ、ウーバーはほかのメーカーとも組むことができる。

 その提携相手となるのがトヨタ自動車やフォードなど。トヨタは5月にウーバーとの資本業務提携を表明している。また、ウーバーはすでに「フォード・フュージョン・ハイブリッド」を自動運転車の実験に使っていることから、フォードが提携先に加わることも十分想定される。さらに、グーグルとは自動運転車開発でライバル関係にあるが、もともとウーバーには、グーグル親会社のベンチャー投資部門のGV(前グーグルベンチャーズ)が投資している関係にある。

グーグル、アマゾン、アップル、MSにも売却打診


 リフトについては、最近の報道で、GMがリフトを完全買収しようと試みたものの、リフトが拒絶したとされていた。19日にRecodeが関係者の話として伝えたところによれば、GMが完全買収を表明した後、リフトは投資銀行と組んで、90億ドルの売却額でグーグル親会社のアルファベットやアマゾン、マイクロソフト、アップルにアプローチし、会社売却の入札を申し入れたが、どこも応札しなかったという。リフトの最新の企業価値が55億ドルと見積もられているのに対して、かなり割高なのは否めない。

 それ以外には、独フォルクスワーゲン(VW)がイスラエルのゲットに3億ユーロを出資。さらに、電気自動車(EV)での自動運転車開発を進めていると噂される米アップルも、5月に中国最大の配車サービス事業者の滴滴出行(ディディ・チューシン)に10億ドルを投資した。滴滴にはやはり自動運転車開発を進める中国・百度(バイドゥ)も出資している。その後、8月初めまでに滴滴の最大のライバルだったウーバーが中国から撤退し、中国事業を滴滴に売却することで合意している。

 こうした自動車メーカーと配車サービス事業者の合従連衡の背景には、自動車メーカーの先行きに対する危機感がある。配車サービスが世界中で急速に受け入れられる中、個人で自動車を保有する意義が薄れ、自動車メーカーとしては新車販売に影響が出かねない。そこで、配車サービスに自動運転車を導入すれば、人間の運転手に支払う賃金を削減するメリットを訴求しながら、自動運転車の有望な市場に育成できるとの読みだ。

 ちなみに、ウーバーと中国・吉利(ジーリー)汽車傘下にあるボルボとの提携では、8月末にもウーバーの先端技術センターのあるピッツバーグの公道でボルボのSUV「XC90」をベースにした自動運転車の走行試験を開始する。同じくRecode によれば、ウーバーとボルボの両社は3億ドルを投じて2021年までに完全自動運転車を実用化する契約を結んでいるという。

オットー創業者もグーグル退職組


 一方で、相次ぐ合従連衡の裏で浮上してきたのが、これまで自動運転車開発をリードし、自動運転車による自前の配車サービスの事業化をもくろんでいたグーグルの相対的な存在感の低下だ。

 今月に入って、グーグルの自動運転車開発部門の最高技術責任者(CTO)であるクリス・アームソン(Cris Urmson)氏が退社を表明した。同氏はグーグルが秘密プロジェクトとして自動運転車の研究に着手した2009年からのメンバーで、それまではカーネギーメロン大学(CMU)のロボット研究者だった。

 彼が退社を決めたきっかけは、ヒュンダイ・アメリカCEOなどを務めたジョン・クラフシック(John Krafcik)氏が昨年入社し、自動運転車部門のCEOに就任したことや、自動運転車部門をアルファベット傘下の独立事業会社にする経営層の判断にあったようだ。自動運転車を開発段階から事業化段階に移行させようとする動きとみられるが、NYタイムズによれば、アームソン氏はクラフシック氏の下での自動運転車に関するグーグルの方向性に不満を募らせていて、数カ月前にはグーグル共同創業者のラリー・ページ氏と言い合いになったという。

 さらに、トヨタが1月に米国に設立し、自動運転車研究を行うAI子会社、トヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)にも、グーグルでロボット開発の責任者を務めたジェームズ・カフナー氏が加わっている。

 実は、ウーバーに買収されるオットーも、グーグルの自動運転車部門の出身者が設立した。共同創業者のアンソニー・レバンドウスキー氏はグーグルのエンジニアで自動運転車開発プロジェクトのオリジナルメンバー。同じく共同創業者のライオア・ロン氏はグーグルマップ部門のトップだった。同社の親会社となるウーバーのトラビス・カラニックCEOは、今後はレバンドウスキー氏が、オットー本社のサンフランシスコとウーバーの先端技術センターのあるピッツバーグで、自動運転車開発の指揮を執ると表明している。

Ottoの走行実験の映像

藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi モノづくり日本会議実行委員会
リフトはライバルのウーバーにも身売りを持ちかけたが、話はまとまらず、ブルームバーグによれば、ウーバー幹部は「20億ドルを上回る価値はない」と言っているという。とりあえず会社売却が壁にぶつかったリフトをめぐっては、まだまだ一波乱ありそう。いずれにしても、自動運転車や配車サービスがらみの合従連衡はしばらく続きそうだ。

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