ニュースイッチ

リオ五輪「4Kテレビ」の販売押し上げ。東京に向け8Kへ布石

映像のスポーツインフラは家、スタジアム、街へと広がるか
リオ五輪「4Kテレビ」の販売押し上げ。東京に向け8Kへ布石

画像は1日に始まったNHKの8K試験放送

 アスリートが最高の技を競うオリンピックでは、映像や画像にも最高の技術が求められる。ブラジル・リオデジャネイロ五輪の開幕を受け、テレビ市場ではフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ「4K」に対応した製品の販売が好調になってきた。調査会社のBCNによれば6月のテレビ販売金額は前年同月比3・9%増となり、単月ベースでは過去3年で最高水準を記録した。

 五輪の番組放送に向けて買い替え需要が回復し、4Kテレビの販売が好調だったためだ。テレビメーカー各社は4Kテレビなど高付加価値製品と相性の良いスポーツを市場復活のきっかけにしたい考えだ。

 「スポーツイベントは最も盛り上がる。貪欲にシェアを追求したい」―。ソニーの高木一郎執行役EVP(エグゼクティブ・バイス・プレジデント)は、スポーツとテレビの相性をこう表現する。動きの激しいスポーツは、細部の映像表現が臨場感を高める要素となる。このため高画質を得意とする日本メーカーの強みを打ち出しやすい。

 最大のけん引役が、4Kテレビだ。BCNによれば4Kテレビの6月の販売台数比率は、2015年6月の約2倍となる22・8%まで上昇した。販売台数は倍増ペースで伸びており「4K効果による販売増を五輪需要が後押ししている」(道越一郎BCNチーフエグゼクティブアナリスト)と説明する。


 16年からは、輝度を拡張してコントラストを高めるハイダイナミックレンジ(HDR)に対応した製品も登場。ソニーやパナソニック東芝などが相次ぎ市場に投入している。

 また画質の改良に加え、没入感を高めるのに欠かせない音響面の強化も顕著だ。ソニーは画面の両サイドにスピーカーを配置し、振動板にカーボンファイバーを採用した製品を発売。パナソニックはCDよりも高音質なハイレゾ対応の製品に加え、画面とスピーカー部分を離し、画面が浮いたような形状の新製品を月内に投入する。


 テレビ各社は16年をテレビの買い替え需要が本格回復する年に位置付ける。通常、世界的なスポーツイベントが開催される年は需要が大幅に拡大する。リオ五輪でも同様の傾向が顕在化しており、年末商戦ではさらなる販売増を見込んでいる。

 20年には東京五輪が開催されて、4Kより高解像度の8K放送が始まる。各社も8Kテレビに軸足を移しつつあり、大きな期待を寄せる。

 ソニーの高木EVPは「20年までに8K製品を市場投入する」と表明。パナソニックは8K映像の伝送ケーブルを開発して、リオ五輪のパブリックビューイングを8K映像で行うなど、布石を打つ。各社は高付加価値製品の販売戦略を推進して、五輪開催に伴う需要を取り込む構えだ。

<次のページ、スタジアムでのコトづくり、さらには街づくりへ>

日刊工業新聞2016年8月2日/16日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
各社のテレビ事業の構造改革はひと段落し、待ち望んできた買い替え需要も出てきた。ただ買い替えサイクルは長期化している上に製品のコモディティー化は進み、業績が市場に左右される状況は変わらない。どこも本体にはほぼ開発部門しか残っておらず、製造は外部委託の状態。以前よりは思い切ったことができる体制だ。「テレビは映像を映す窓」なのは確かだが、これまでの延長ではない、新しい攻めの戦略を見てみたい気もする。

編集部のおすすめ