インテルCEO、買収でARMとの競争激化?の質問に答えはぐらかす

「競争相手は自分たちのテクノロジー(=ムーアの法則)」と回答

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CES2016で講演するインテルのクルザニッチCEO
 世界を驚かせたソフトバンクグループによる英半導体設計大手、ARM(アーム)ホールディングスの巨額買収。驚いたのは半導体の巨人、米インテルも同様だろう。ARMベースのマイクロプロセッサーがスマートフォン市場の95%を占める中、インテルとしてはモバイル市場での屈辱を晴らすべく、来るべきIoT社会で覇権を握ろうと躍起になっていたからだ。こんな大ニュースを前に、(あくまで想像だが)心中穏やかなはずはない。

 それでも、ニュースサイトのビジネスインサイダーによれば、4-6月期の業績発表の場でインテルのクルザニッチCEOは平静を装っていたという。ARMとの競争激化についてどう思うか感想を問われ、「競争は結構なことだ。この市場にはいつも競争が存在する。しかし、我々が競争している相手は、自分たちのテクノロジーそのものだ」と話し、明確な回答を避けた。

 この発言、素人には何を言っているのかわかりにくいが、競争相手である自分たちのテクノロジーとは「ムーアの法則」のことらしい。インテル共同創業者のゴードン・ムーア氏が1965年に提唱した、18カ月から2年ごとにプロセッサーを構成するトランジスタの集積度が2倍になるというおなじみの法則。半導体業界での、いわばロードマップともなっていた。ただ、マイクロプロセッサーの集積度が高くなればなるほど回路を構成する線幅が狭くなり、最近ではより一層の集積化が困難になっているのも現実。そのため、インテル自体、昨年に次世代チップへの移行期間を2年半に伸ばすとクルザニッチCEOが宣言したほど。ある意味、ムーアの法則の限界が、インテルの競争力そのものを阻む壁ともなっているようなのだ。

 方や、18日付のウォールストリートジャーナル(WSJ)では、ソフトバンクの豊富な資金力によりARMが競争力を増すとみている。企業買収や研究開発を強化することで、インテルの牙城でもあるデータセンター(DC)向けチップセットといった新市場に設計者を振り向けるようになるかもしれない、と指摘する。DC向けサーバーでは90%以上のシェアを持つインテルだが、米ペイパルのように省エネ性能の高いARMベースのチップでDCを構築しようという計画もある。DCのサーバーに加え、水面下で進むプロセッサーまで含めたサーバーの垂直統合の動きは、ARMを利することになりさえすれ、インテルにとっては分が悪い。

 省エネ性能以外に、こうしたARM人気の背景にあるのは、ライセンス料の相対的な安さが大きいという。2015年の売上高は15億ドルにも届かない一方で、ARMの顧客が2015年に出荷したチップ内蔵製品は約150億個にも上る。単純計算で1個当たりのライセンス売上高は0.1ドル未満。理由はライセンス先同士の競争から、設計アーキテクチャーの提供価格も安く抑えられているのだという。さらにライセンス先には、半導体設計の面でフレキシブルさを享受できる利点も。新しく開発された機能を素早く反映させながら、ARMの設計図だけでチップを作ってもいいし、独自の技術を加えることもできるという。

 この10年間でARMがとくにモバイル分野で急速に伸びてきたことから、インテルがARM買収に乗り出すのではとの噂もあったという。だが、インテルがARMアーキテクチャーをライセンスすることはすなわち、インテルプロセッサーの競合相手を顧客に持つことになり、ビジネスモデルとしては合理的ではない。やはり、クルザニッチCEOが質問に対して答えをはぐらかしたことこそ、ソフトバンク傘下となるARMが、以前よりも大きな脅威としてインテルの眼前に立ちはだかっていることを意味しているのかもしれない。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

藤元正
モノづくり日本会議実行委員会
委員長

【追加】インテルは同じ決算発表の場で第7世代となるコアプロセッサー「Kaby Lake(ケイビーレイク)」の一部出荷開始も明らかにした。Broadwell、Skylakeに続く14ナノメートルプロセスのチップだ。ただ、前の二つも含めてリリースが遅れに遅れ、MacRumorsによれば、Kaby Lakeを搭載したアップルのRetina Macbook Proの発表は、年末か年明けになる見通しという。これまでiPhone/iPadのプロセッサーはARMベースの自社製Aシリーズで、Macはインテル製で、と巧みに使い分けをしてきたアップルだが、Macの性能向上がこのところあまり進展せず、ユーザーにはフラストレーションが溜まっている。そろそろアップル自体の堪忍袋の緒も切れ、「全部Aシリーズにするぞ」と腹の中では考えているかもしれない。

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