「日本再興戦略2016」政策と潜在成長率向上の相関は?

総花的で軸が見えないという批判にどう応えていくか


財政健全化の道筋不透明、増税延期で中間目標削除



 政府は2日、名目国内総生産(GDP)600兆円実現に向けた経済財政運営の基本方針(骨太方針)を閣議決定した。2017年度に予定していた消費増税を2年半先送るものの、20年度に基礎的財政収支(プライマリー・バランス、PB)黒字化を目指す従来の目標を堅持する。

 ただ増税延期で想定より約4兆円目減りする税収の穴埋めには触れず、前年の骨太方針に盛っていた18年度のPBの中間目標を削除した。財政健全化の道筋が不透明になった。

 安倍晋三首相は、消費増税延期によって目減りする約4兆円の社会保障財源について、「赤字国債を発行して賄うのは無責任だと思う」と1日の会見で力説したが、骨太方針には赤字国債発行を封印する記述はなかった。

 またPB赤字額の対GDP比率を、18年度に1%程度に引き下げる中間目標も、今回は盛り込まなかった。20年度のPB黒字化という最終目標を堅持しながら、目標達成までの道筋に不透明感を残した内容で、財政規律の緩みが懸念される。

 増税延期で20年度のPB黒字化の“ハードル”はさらに高くなった。内閣府は実質2%以上、名目3%以上の高い成長率が継続する「経済再生ケース」で、仮に17年度に消費増税を実施しても、20年度に6兆5000億円のPB赤字が残ると試算する。増税延期でこの赤字額が拡大する。

 他方、政府は期初の想定を上回る税収増(税収の上振れ)や歳出抑制効果を政権の経済政策「アベノミクス」の成果と位置づけ、この成果を同日閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」の財源とする方針も示した。税収増を成長戦略などに配分する「成長と分配の好循環」実現を目指したものだ。

 これに対し、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は、国の“借金”が1000兆円超と主要国で最悪な財政事情を踏まえ、税収増は財政収支の改善に充てるよう求めた。

 だが安倍首相は消費増税を延期した2年半の間に「アベノミクスをもう一度加速し、さらなる税収増を目指す」考えを表明。「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針に、少子高齢化対策や成長戦略の加速、消費喚起などに税収増を充当する方針を示した。

 官民をあげたIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などの研究開発投資、サービス産業の生産性向上、プレミアム(特典)付き商品券の発行などによる消費喚起に取り組む方針だ。今回の骨太方針は、成長に伴う税収増頼みの財政健全化目標で、実効性に危うさを残す内容となった。

日刊工業新聞2016年6月3日

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安東 泰志

安東 泰志
06月03日
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これまでの3つの成長戦略だけでKPIが136項目もあり、しかも、達成したと政府が言っているものの中にも、景気循環による一時的要因の可能性が否定できないものがある。これまでの成長戦略は2014年の改定でコーポレートガバナンスの強化や産業の新陳代謝を入れた以外は総花的で、サプライサイドの構造改革で生産性向上を図り、潜在成長率を上げるという軸が見えない。政策と潜在成長率向上の相関をよく分析して、メリハリをつけて欲しい。

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