アーティストとコラボ、フェスで体験…「ハイレゾヤベー!」を広める

<追記あり>ソニーの高音質「ハイレゾ」浸透。日本のオーディオ技術、海外でも可能性

関連市場が拡大


 CDよりも高解像度な音質を実現する「ハイレゾ」が浸透しつつあり、イヤホンや再生機器などの関連市場が拡大してきた。ソニーマーケティング(東京都品川区、河野弘社長、03・5792・1000)は勢いを加速しようと、機器の販売にグループ企業で抱えるアーティストや楽曲を組み合わせて展開している。なじみのある楽曲でこれまでの音とハイレゾの差をはっきりと感じてもらい、魅力をアピールする戦法だ。

 「自分の好きな音楽をハイレゾで体験してもらうのが一番響く」。モバイルエンタテインメントプロダクツビジネス部の新宮俊一統括部長は、自信をみせる。ソニーの最大の強みは、機器などのハードウエアだけでなく、レコード会社という“コンテンツ”も持つ点。アーティストや楽曲を入り口に、ハイレゾ機器の販売拡大につなげる。

 最も古くから取り組んでいるのは、ヘッドホンや携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」などのアーティストとのコラボレーション商品だ。限定デザインを施すとともに、ウォークマンにはアーティストのハイレゾ楽曲を内蔵。2015年は計10モデル程度を発売した。「好きなアーティストを突き詰めたいという一つの形」(新宮統括部長)で、モデルによってはすぐに売り切れてしまう場合があるという。

販促活動を強化


 ハイレゾ市場の立ち上がりを受け、15年はコラボモデル以外でも機器と楽曲を組み合わせた販促活動を強化した。夏に音楽ファンの間で知名度の高い「フジロック・フェスティバル」の会場で、出演アーティストのハイレゾ音源を試聴できるコーナーを設置。10月からは家電量販店で、グループ所属アーティストのハイレゾ楽曲を体験できる「ハイレゾ・テイスティング・スポット」の設置を始めた。すでに800店舗で展開しており、常時20曲程度の試聴が可能だ。

 重要なターゲットとしているのが、20―30代前半の若者だ。オーディオ機器は嗜好(しこう)性が高まり、年齢層の高い愛好家が中心顧客になっている。そこで若者に人気なアーティストを起用するなど、ハイレゾを契機に若者と楽曲、オーディオ機器との接点増加を強化し、顧客層の拡大を狙う。「体験後のアンケートなどで『ハイレゾヤベー!』という素直な感想があると、一番うれしい」(新宮統括部長)。

4割に引き上げ



ソニーは画質や音質、操作性を高めた高付加価値テレビで上位顧客の取り込みを図る(「ブラビアX9350D」シリーズ)

 楽曲とオーディオ機器を組み合わせた販売戦略は功を奏し、売り上げにおけるハイレゾ構成比は順調に増えている。現状は3割強だが、新宮統括部長は「これを4割まで引き上げたい」と意欲を燃やす。

 CD販売が低迷し、動画サイトやストリーミング配信など、音楽を聴く方法はずいぶん多様化した。しかし「音楽に対する熱量はそんなに変わっていない」(新宮統括部長)。今後はスマートフォンとの連携なども視野に、個人の音楽の楽しみ方の変化に合わせて訴求方法も変えていく方針だ。
(文=政年佐貴恵)

ファシリテーター・原直史氏(ソニー元役員)の見方


 配信方法ばかりが話題になっていたオーディオの世界で、ハイレゾという新技術が定着し始めたのは、うれしいニュースだ。この記事は、日本市場の話だが、海外での評価はどうなのだろう。ヨーロッパには、高品質を売り物にしているオーディオメーカーも生き残っている。高音質を評価してくれるユーザーはいるはずだ。この技術が、海外で市民権を得て、久しぶりに日本のオーディオ技術が世界をリードするというようになってほしい。 

日刊工業新聞2016年5月27日 モノづくり面

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
05月27日
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 音楽(ソフト)と再生機(ハード)の両方を持つのは、ソニーの強みだ。平井一夫社長は機器の売り切りではなくソフトと組み合わせて継続的に収益を上げる「リカーリングビジネスに力を入れる」としており、音楽同様、成長牽引分野と位置付ける映画やゲームでも展開を強化している。
 オーディオ愛好層の平均年齢が高くなりつつある中、音楽で取り込みを強化したいのは10~20代の若者。彼らは今、単純に楽曲を聴くだけでなく、音楽フェスやライブなど、実際の体験を好む傾向があるように感じる。事実、別のオーディオメーカーはライブ会場でオーディオ機器の即売会を行ったところ、予想以上に売れたという。音楽の体験を収益向上につなげられるかが、カギとなりそうだ。

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